俺は父さんが嫌いだ。気に入らなければ殴ってくる。腹が立てば蹴り付けてくる。鬱憤を晴らしたくて何度も何度も俺の頭部を強打させようと掴み、叩きつけようとする。
俺の反抗は意味を成さない。
あの家は父親の暴力を黙認する。憎らしかった。どうにかしてやりたい程憎らしかった。俺は痣だらけで、そのくせその痣がちょっとイカしてるなんて生意気思っていた。ガーゼとか湿布とかカット判とか、仕舞いにゃ包帯まで巻かれるほどの傷は俺を肉体的に強くさせた。少し擦り剥いたくらいでくらいで泣く同年代の気持ちはわからないし、俺を可哀想がる女子や先生の気も知れなかった。特に俺を可哀想がる所以は合点がいかない。具体的に何が可哀想なのかもわからず、ただただ可哀想と口にするアイツら程幸せな人間はいないと憮然とした思いで関わることを嫌った。
父さんは俺が嫌いだ。
俺がいないときは母親を殴っている。俺は母さんよりも母さんのお母さんとお姉さんに似ていた。どっちにしても男らしい顔ではない、我ながら愛らしくて可憐な少女を思わせる顔が大嫌いだった。掻き崩してしまいそうな衝動に駆られるも、理性というものはその行為を怖れてするにまでには至らなかった。
父親がここまで俺を嫌うのはこの容姿のせいではないのかと疑うようになってから、俺は自分の顔が嫌で嫌で仕方がないのだ。何故なら俺は暴力を奮われる理由を知らない。一つわかっていることは、父さんは確かに俺の何かに苛立って暴行に及んでいる。
改めて俺は父親のことが嫌いだ。

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おかしいのは素からの蓮。

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テーマ「人外ファンタジー」
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