※イナズマオレブン観 ―――――――――― 何故か、最近のニースは調子が悪い。世界でもレベルが高いチームと試合をすればする程、その現実を突き付けられる。ニースはボディが非常に強く、ガッツもまあまあある。キックとガード以外は申し分ない所かそれ以上だ。しかし、それが通用しなくなった。理解の出来ないもので、頑丈なボディから繰り出されるウォーターベールV2ですら、彼には到底及ばないガードを有するディフェンスに破られてしまうのが現状だ。 その様なことが何度も続けば本人とて悩むのは当然で、ある時彼は気がついた。 (自分は世界と渡り合えるレベルではない) 独りよがりだと言われれば、そういうことにも出来る。現在彼がベンチに下げられているのは、おそらく予期されていたことだ。 それから数日後、誰かをチームに抑え入れた気がした。そして、とうとうニースはレギュラーの面子から外されることとなる。 「何処へ行く」 ジャパン宿舎の門に背を預け、ホリーが腕を組んで立っている。いつもの口の端をつり上げた不敵な表情ではなく、限りなく無表情に近い顔で睨みを利かせていた。待ち構えるその様子は、そうなる結果をわかっていたかのようである。 「戻るのさ」 国に。 暗い顔をして呟いた。 「報告は?」 「してない」 「誰にも?」 「お前が聞いてる」 「呆れた」 ホリーは「あーあ」と顔を振る。故意の隻眼は眉間に皺を寄せた。 ホリーがイナズマジャパンに勧誘を受けたのは、ニースがレギュラーにまで上り詰めた大分後になってからだ。それ故に良好な彼をあまり知らない。端から補欠のホリーには、一度レギュラーから外されたくらいでここまで気落ちする定が知れない。 「ニース」 「止めるな」 「いつでも待っててやるよ」 ホリーなりの気遣いが痛くニースに刺さる。 強いて言えば鯱のような目は例の如く見開かれるのだが、まるで澱んだ海にいる群れから孤立し独りで狩りをする雄のよう。彼に存続の意志がないことをホリーは知らない。一人不適に笑う男が事実を知るのは先のこと。 |