烏ってなんでも喰うんだぜ。
車に轢き殺されて猫だか、犬だか、狐だか、狸だかわからなくなったモノを皆で寄って集って啄むんだ。路肩でやれば良いのに、車道の真中なんかでやるもんだからその内轢かれたりしてな。ドーンって。
でもアイツらは気にしないんだぜ。喰いモノが増えただけだ。啄んでいる内に、どれが仲間だったかなんて忘れちまう。無常な話で、ただ無意識に、一心に喰ってる。仕方ないよな。自然の摂理だし。
「既視感でもあるのか?」
うん。どうしてわかった?
「貴公のことだ。口にするのも煩わしい生物の話など、故意にするとも思えぬ」
正解。と、言いたいところだけど、残念外れ。
兵頭は顎に手を置いて虚空を見つめる。形の良い目は瞑られ、細い眉は眉間に寄せられた皺で波を打つ。考える素振りはまるでおっさんだ。
「ああ、貴公自身のことか」
ひっと、喉から音が漏れた。口元を覆おうとした掌で髪を掻き上げる。兵頭にしては勘が良い。吐く息が震えている様な気がした。
そうだよ、俺は仲間なんてもうわからねえ。倒れ伏しててみろよ。俺はその上を跨いでなんかやらないぞ。
「気持ちが悪いな」
頬が引きつる感覚に失望する。その肯定に死体を待ちわびた烏の如く食らいつく。俺は車体に乗り上げられたことにも気がつかない。
「お前にそう言って貰えて俺は気持ち良いよ兵頭」
弱肉強食の世界で権力者に跪くのを止め、群集を作り上げて、猪突猛進の勢力で刃向かってくる。そんなお前らは美しい。


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