兵頭さんと愉快な仲間たちA(シード/日常)

※縞との間の共有ネタ
※月山国光戦試合終了前に抱いた歪んだ兵頭さんに対するイメージ
※ナチュラルに南沢がシード
※通常時シードは寮生活
※何故か月山国光も東京にいる
※時間軸は南沢が抜けてすぐ(万能坂戦前)
――――――――――

6.
@「兵頭さんにくっついてるアレは誰だ」
俺がいない間に(当然っちゃ当然だけど)シードが溢れかえる程に増えたらしい。大浴場も細かく入浴時間が区切られているとのことで、俺は兵頭の先導にただついていく。兵頭に続いて脱衣場に入ると、まだそんなに利用者の数は視れない。
「一番風呂は誰だ?」
「兵頭さん」
藍色の髪に白のメッシュを入れた少年が、脱衣の手を止めてこちらを振り向いた。顔合わせをしたことはないが、確か地区予選第二回目に雷門(が勝たなければ天河原とだった)と当たる手筈の中学校の者だったか。俺の姿を見て、軽く会釈をする(なんと出来の良い)。
兵頭の後ろに突っ立っていると、彼に並列する位置で脱衣途中の二人が、俺を怪訝な目で見ていることに気がついた。余所者認識か。エメラルドグリーンに近い毛色の少年に至っては、あからさまに睨んでいる(俺が何をした)。
「あっ、誰もまだ入っていませんよ!どうぞ、兵頭さんに一番風呂を差し上げます」
俺に睨みを利かせていた彼は、兵頭に顔を向けると声を高揚させてそう言った。対して兵頭は惚けているのか、それでも素なのか、爆弾を落とす。
「いや」
「この一番風呂は南沢、貴公のものだ」
兵頭、お前は笑顔で俺を見ているけど、後ろの奴は俺のこと睨んでいるよ。

A洗浄
譲られた一番風呂を兵頭に譲り返し、二番手に取り成すことに成功した。後続して大浴場に足を踏み入れると、曇り硝子で個室化されたシャワールームが両サイド合わせて十数個並んでいるのがわかる。そりゃあシャワールームを個室化なんてしたら、一度に入浴できる人数も減るわな。
「好きな所を使うが良い」
「一先ず、お前の隣で良いよ」
「そうか?」
最も浴槽に近いシャワールームに手を掛ける兵頭に、すぐ横の個室を指差して言う。下手に離れるよりも、行動を共にしていた方が良いかなと思っての意向だ(二重の意味でな)。

サアアアアアアアアアアア

シャワーの口を捻り、暖かい水を頭から被る。ここに来てから生じた疲労感が洗われるような気がした。ここへ来ることより、来てからの方が余程に疲れた(ああ、これは心労か)。髪を梳いて、少し泡立てたシャンプーを絡ませる。
(体洗うもんがないな)
頭髪を洗う俺の視界には、ボディタオルと思しきものがない。共同風呂だし、ないのは当然か。いやでもと思って、壁を挟んで隣の兵頭に問いかけてみる。
「兵頭ー」
「如何した南沢」
「ボディタオルってねえのー?」
「ぼでいたおる…?それは何物か」
「垢こすり、って言えばわかる?」
「ああ、者どもが使っておるアレか」
「…え?」
「すまない。余は使わぬのだ」
「兵頭お前、どうやって体洗ってんの?」
「石鹸一つ」
後日、自分用の他に兵頭にもボディタオルを買ってこよう。自分がちょっとやそっとのことでは驚かなくなっていた。これは恐ろしいことだ。

B「お前…風邪引くぞ」
兵頭「………、………、…、…」ブツブツ
南沢(呪詛…?)

ガチャッ

南沢「何を唱えてんだ兵ど…冷たっ!?」ザアアァァァ
兵頭「扉を閉めろ南沢。統一した精神が乱れる」(シャワーを水にして浴びている)
南沢「ここは修業の滝じゃねえ」

C兵頭の滝に巻き込まれる帝国
御門「クソ…どうしたら隼総の奴に勝てる」
龍崎「一勝何敗だっけ」
御門「覚えてない」
逸見「どうせだから勝敗結果を当の隼総に聞いてみるか?」
飛鳥「逸見、口で言わなくとも本音が顔に出てる」
御門「逸見…お前まさか、楽しんでるのか?」
逸見「嫌だなあ、そう見える?いくら俺でも傷付くぜ」(眉尻をさげてみせる)
飛鳥(この嘘吐き男…)
隼総「俺は覚えているぞ」ヌウ
御門「げ!」
龍崎「聞かれていたな、御門」
隼総「お前が化身出せるようになって始まった闘争だ。確か、し」
御門「やっ…めろおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

バンッ

兵頭「喧しいぞ貴様らぁ!」

ポイッポイッ(兵頭さんのいたシャワールームに御門と龍崎が放られる)

龍崎「ちょ!どうして俺まで」
兵頭「騒がしい御門に最も隣接した位置にいたのでな。両手が伸びた次いでに一先ず掴んでおいた」キュッ(蛇口を捻り水を強める音)
龍崎「んな殺生なあ!」
逸見「二人は犠牲になったのだw」
飛鳥「やめろよ。そんなことを言っていると俺達も巻き込まれる」
御門・龍崎「うおおおおおおおおお」ドドドドドドドドドドドド(水に打たれる音)
兵頭「清めろい!その荒んだ心を!」

南沢(あーあ。そういう性分なのね)

D「南沢は興なきゃつよ」
湾田「浪川が逆上せたぞ!」
喜峰「手間かけさせやがる」
浪川「うう、面目ない…」
それを見て南沢。
南沢「そろそろ俺達も出るか」
返答は追ってこない。
南沢「兵頭?」
振り向くと水面に兵頭は浮いていた。
南沢「浮いてる!兵頭、浮いてる!」
一文「兵頭!?」
篠山「兵頭さん!」
兵頭「我が力は永久に不滅…」
南沢「縁起でもない。逆上せて浮いておきながらそんなこと言ってんじゃねえ。ほら肩かしてやるかr」ザッパーン
一文「背の低い貴兄では無理があったのだな」
南沢「笑ってんじゃねえぞ一文字!(あれ、コイツさっきまで心配してなかったか)」
月島「背の低い己等は自らそのようなそつな行いをしない」
南沢「…」
御門「貸せ」ザパッ
南沢「御門…お前」
御門「本当に、面倒臭い人だよな兵頭さんは」
南沢(あれだけ酷な思いさせられといてコイツ…。所謂ツンデレという奴か)
御門「剣城!」
剣城「はい。…え、俺ですか?」
御門「隼総だけには死んでも頼みたくない」
剣城「はあ。………!?」
南沢(剣城の奴、今の一瞬で俺を二度見三度見したな)

7.「何をしている!消灯時間は五分前に過ぎたぞ!」
消灯時間が過ぎた頃、隣室の扉が開く音が聞こえた。あそこまで規律に厳しい兵頭にも不真面目な所があるのだなと、少し気が楽になった(そもそもあんなに堅苦しいラストサムライは知らない)。潜り込んだ布団から出て、兵頭の動向を探るべく部屋を出た(好奇心が先行した)。

「其方ら、何をしている」
何をするかと思えば、見回りだった。(もう既に何度思ったことか知れないが)ここは修学旅行先の宿舎か何かか。
「かあどげえむなどしよりおって、これ没収だ」
やはり、俺の知ってる兵頭じゃない(どうしてカタカナの発音が拙い?)。少し遠くから後をつけているために状況は良くわからない。
「この部屋が騒がしいぞ。其方ら、とっとと寝静まるが良い!」
頭が痛くなってきた。
「二人は今部屋ではなかろう。其方らのへ」
「オイ、兵頭司、何をしている」
兵頭は大人の見回りに捕まり、室内の違反者と共に怒られる羽目となる。俺も今の内に引き返そう。
(あいつ、正座出来ないんだ)

7.AM5:00
朝方に兵頭が部屋を出て行った。時計を見ると午前五時。クロゼットを開ける音が騒々しくて目が覚めた。何せ、カッーン!って響いたんだ。五月蝿いに決まっている。
俺は最南端に部屋を構えている。シードが増えていくに連れて元の部屋を維持するのは難しく、安息の地として兵頭の隣に移されたらしい(実際はまるで逆の効果がはたらいている)。焼ける橙に色づいたカーテンを開く。庭の方に兵頭の姿を見つける。
(なにしてんだ…?)
軍手に、手差しなんか嵌めて。見るからに農作業ではあるのだが、またどうして。 兵頭が汗を拭い一言吐き出した。
「良き朝だ…」
俺はそろそろ兵頭のことが心配になってきた。

[お前、ソイツのこと好き過ぎじゃね?]
ツイートしてから数時間後にリプライがツイッターの画面に表示された。俺は苦笑しつつ、ダイレクトメッセージを打ち込み送信した。
[アイツ、餓鬼みたいで目が離せねえんだよ]






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