兵頭さんと愉快なシード達(シード)

※縞との間の共有ネタ
※月山国光戦試合終了前に抱いた歪んだ兵頭さんに対するイメージ
※ナチュラルに南沢がシード
※通常時シードは寮生活
※何故か月山国光も東京にいる
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1.再開
「久方振りだな南沢…!」
「背、伸びたな兵頭…」
シード宿舎に行くのは何年振りかな。ずっと雷門にいたんだから二年振りか。
最初に出迎えてくれたのは同期の兵頭。着物に身を包み、デカい図体しておいて餓鬼みてえに目を爛々輝かせていやがる。感極まったためか手を開いたり閉じたりしているのが少し怖い。その内盛大なハグに移行しそうな恐れがある。そう思った直後に案の定抱きつかれた。オイ、今し方俺の骨がなったぞ。
「ぎゃあああああぁあぁぁあぁ!!」
「ああ、変わってない!貴公は何も変わってないのだなあ!」ぐりぐり
「嫌みかお前!つうか痛ェ!抱きつくな、頬摺りもやめろ!ほ、骨が、骨が折れる折れる!」

2.「茶を淹れてやろう」
お茶を通されることとなった。
(あ、そこからやるのか)
兵頭は専用の器機で湯のみの茶を混ぜている。だが、半分以上零している(形だけなら結構様になってるのにな)。
見た目はともかく味は美味いもんなんじゃねえかなと思って、差し出された抹茶らしきものを飲むことにした。
「うん…」
どうしようもない程不味い。
「どうした南沢?」
「あ、いや…」
兵頭の手元にはもう一つの湯のみがあった。ご丁寧に「兵頭司」と名前ラベルが貼ってある(小学生かよ)。そして、一口飲むと固まった。
「美味よの」
(無理してる。顔が苦いと叫んでいる)

3.「長身の優越感という奴か。くたばれ」
兵頭「一年共ぉ!」
一年「はい!」
兵頭「集合!」
一年「はい!」
兵頭「(自分の二の腕指差しながら)ぶら下がれぇい!」
一年「はい!」ガシガシッ

わいのわいの

南沢(俺の知ってる兵頭じゃない)

4.「喧嘩両成敗!」
「お前、俺と化身被ってんだよ!!やめろよそういうの!」ゲシゲシ(隼総の部屋の扉蹴りつけている)

バンッ!

「お前だろ!毎回毎回突っかかってきて五月蝿いんだよ!化身出したの俺の方が先だぞ!?生ゴミが主食のクセして。お前はゴミ箱でも漁ってろ」
「なんだとおぉぉ!!」ガシッ
「何だぁ?俺とやるってのか!」ガシッ

廊下からおよそ中学生男子の声とは思えぬ怒号と、物が打ち倒される様な衝撃音が聞こえてきた(扉でも外れたか)。部屋の扉を開いて覗いて見れば取っ組み合い、もつれあい、倒れ込む少年が二人。あれは確か天河原中の隼総英聖と、帝国学園の御門春馬か。隼総は割合端正な顔立ちをしているが、あの牙を剥いた形相は獰猛な猛禽類を連想させる。それに倣う様に叫ぶ御門の黒い瞳は拡張し、群れを為す鴉の如くだ(叫ぶというよりかは鳴くの方が近いのかもしれない)。
これだけの騒ぎを聞きつけても兵頭が部屋から出てこない。まさか、これは日常茶飯事か?
「騒ぎを聞きつけて来てみれば…醜い争いごとはやめよ!そこからは何も生まれないぞ!」
そう思案して束の間、奴は階下にいたのか、忽然と廊下に姿を現した。劣勢に回る御門が隼総の下で吠える(それとも鳴く?)。
「あんたは引っ込んでろ!」
まるで挑発でもするかのようだ。御門の腕を捻りあげている優勢位置にいる隼総も、顔に焦燥感を浮かべながらも吠える(それとも鳴く?)。
「ふっかけて来たのはコイツなんだがなぁ!?」
その焦りは御門との喧嘩の末か(そもそもなんてくだらないことで争っているんだ)、兵頭が来たことに対してのものか定かではない。だが俺は見てしまう。隼総の顔が一層深く嘆きに歪んだのを。
「見損なったぞ。御門、隼総」
兵頭が両者の頭をガシリと掴む。やっべえ、これ絶対やっべえのだ。この時兵頭の手が明らかに規格外なサイズなのを知る。
「……!?」
「喧嘩両成敗っ!!」

ゴンッ

ここを仕切っているのは兵頭らしい。俺の知ってる兵頭じゃない。改めて兵頭の素上を知った。

5.「この大地の実りに感謝…!」
外見縦百センチメートル、横百八十センチメートルのテーブルに、半ば強制的に着席させられた。兵頭はそのままどこかへ向かい、夕食と思しきものを乗せたトレイを手に戻ってきた。徐に一方を俺の前に置くと、向かいに腰を下ろす。
「皆の衆、席に着いたか?」
そう周りに呼び掛けるもんだから、兵頭の目の前に座る俺は注目を余儀無くされるワケで、四方八方から視線を突き刺される。俺のことを知っている同期なんてほとんどいない。現に俺の隣に座る一文字は初顔でないくせに舐め回すように俺を見てくる。非常に、居心地が悪い。
「黙祷ッ!」
(はっ)
周りを見渡せば皆、目を閉じている(俺と兵頭の隣に並ぶ数名を省けば)。俺は一文字の視線から逃げるように、それに倣わせてもらうことにした。
「黙祷やめいっ!」
(はっ)
本当に兵頭はここを頭領の様だ。普通なら、飯を喰うときに号令なんてかけねえ(感覚としては修学旅行だな)。手を合わせ、瞼を閉じたままの兵頭が口を開く。
「食堂の従業員の方々、いつも旨い飯をかたじけない」
隣の一文字が続く。
「大地の実りに」
それに兵頭の隣の月島が続いた。
「天の恵みに」
最後に月島の隣の柴田が締めくくる。
「いただきます」
全ての席に座する寮生が声を揃えて言葉にした。
「いただきます」
吹き出さなかった俺を誉めてやりたい。しかしこれは忍苦を強いられるな。体が震えやがる(腹筋が痛い)。
「如何にした、南沢」
「えっ、いゃごほっ!?」
脇腹に強烈な一撃が見舞われた。
「何もありはせぬ。久方振りの我々との食事に感極まったという所だ」
「?そうか」
(おおおおおおおおっ…!)
呻きをどうにか堪え(注目されるのは御免なんでね)、ほとばしる熱い痛みに一文字の方を向くと、不適に笑う月島、柴田と目があう。俺を殴りつけてきた当の一文字も似たような顔をしている。睨んでやれば、俺に耳打ちしてきた。
「兵頭に続いて事を抜かすのは、我々とて一興として名乗りを上げたものよ。兵頭のきゃつはそれに気がついていない」
堅苦しい言葉の端々に悪戯心が見え隠れしていた。奴が言うことを極端に削れば、兵頭で遊んでいる、ということか?
「これは極秘だ」
そう一文字は言って、人差し指を立てる。「内緒だよ」なんて吹き出しがつくような可愛げのあるもんじゃねえ。三人の顔は酷く楽しげで、俺は対面で静かに飯を喰う兵頭に同情した。
(兵頭、箸の持ち方、間違えてる)



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