ジャイボと姉弟


玄関の開かれる音がして、私は居間から顔を出した。
洗いたての髪から、ぽたりと雫が滴り落ちた。
不良には成り得ない、弟の心配をしてみる。

「典瑞……もっと早く帰ってきなよ」

はっきりと、聞こえるように言ったそれは一瞥もされずに無視された。
お年頃なんだと思う。
でも、なんだか納得がいかなくて、ひとり頬を膨らませた。むぅ。
ガシガシ、とタオルで乱暴に髪の水分を拭いとる。

「可愛くないなー」

ぽつり、と呟いて、私は典瑞の部屋へ行くことにした。
特に何か目的も理由もないけど。


君は僕の夢を見る




部屋に入ろうとすると、入れ違いに典瑞が出て来た。お風呂かな。
今度は、ちらりと私を見た。
何、とは言わずに、黙って横を通り過ぎていった。
まぁいいか。私は典瑞の部屋に入って、色々物色してみる。
最近は随分と、家族間の空気が冷え切り、弟ともまともに会話なんてしていない。
あんなに仲良かったのになぁ……。

「なんか…変なものとか持ってないかな〜」

私はそういって辺りを見回すが、けして触りはしない。いくら姉でもね。
きちんと整理されていて、見ているだけじゃ何も得られなかった。
つまらん。
何もすることがないから、取り敢えずベッドの端に座った。

「前はふたりで一緒に寝たりしてたのにな」

言葉にしてみると急に寂しくなって、ベッドに寝転がった。
可愛くない私とよく似た可愛い弟。




「ん…の、りみず……?」
くしゃり、と耳のすぐ傍で音がして、誰かに髪の毛を触られている様だった。
でも、瞼が重くて目が開かない。
そして、身動きのとれない私の唇に、何かが重なって酸素を奪われるような感覚に遭う。それは間違いなく典瑞で、キスをされたのだろう。

「ん…っうぅ、んんっ」

ゆっくりと目を開けると同時に、唇が解放されて酸素が急に入ってきた。
私が、驚いて噎せていると鼻を噛まれた。
地味に痛い。

「ぃたっん……ん、何して…るの」

腕を抑えつけられていたことに、今更気づいた。何を。
冷たい指先が服の裾から侵入してきて、また唇を塞がれた。


「あの人たちは今更、僕らに興味なんてないよ」




お題配布→確かに恋だったさま
131127    ねお



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