「ユリ」

名前を呼ばれて振り返った。
思った通り、名前を呼んだのは私が会いたいと思っていた人だった。

「クラサメっ!!」

そう彼の名を呼んで、小走りで近寄った。
彼はやんわりと笑んでいる。
私が言葉を発しようとしたところで、彼の後ろからひょっこりとメガネのあの子が顔を出して、背中に軽い衝撃。

「っ…と、びっくりしたなぁ、もう!止めてよね、エミナにカヅサ!!」

背中に体当たりしてきたエミナと、カヅサに言う。
ふたりは愉快そうに笑った。

「ユリごめんね〜?でも、会うの久しぶりだったし、どうせなら怒った顔や驚いた顔が見たいかな〜って」

「そういえば、最近は4人で集まるのってなかなかなかったもんね」

許してあげる、と言ってエミナに抱きつく。ぎゅうぅ、と抱きしめ返された。

「誰かさんは、他の所で4人組になって有名になったりしちゃったしね、クラサメくん」

「……カヅサ、黙れ。忙しいのは俺だけじゃないだろ」

「本当だよネっ」

くすくす、と笑う私たちと、すねたような顔をするクラサメ。
ふふ、と私は笑って、エミナから身体を離す。
最近は、自然とこうして4人が集まることが出来ない位に、みんな忙しくなってしまった。特に、恋人であるクラサメは四天王のひとりで、朱雀以外でもその名は有名だ。
あの忙しさの中にいると、こんな事が凄く幸せで不思議な事のように思えてしまう。

「で、ユリは何処に行こうとしていたんだ?」

ふ、とクラサメに話を振られて、私は若干戸惑って応える。

「ふぇっ??あ、…私?私は、生まれたばっかのチョコボを見せてもらいに……」

「そうか、俺も一緒に行こう」

「僕も…「カヅサくんは私と一緒」え!?……あ、はい」

ジャマしないの、とカヅサはエミナに引き摺られて行った。
私はそんな二人を見て、顔を合わせて笑った。そっと、クラサメが差し出した手を取って、私達はチョコボ牧場までゆっくりと歩いた。




サイダーの泡に紛れて消えた



131104    ねお


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