「お前が何を考えているのか、流石の私にも分からないよ……」
そっと、フェイスが椅子に座っている私の頭を撫でながら言った。

「わ…たしは、ふぇいすの、こと…わかるよ?」

だって、大切な私の片割れだもの。
ぱちぱち、と目を瞬きフェイスを見つめる。対するフェイスも、私だけを見つめている。

「…分かっているんだ、本当は。私が、あの時選択を間違えたんだって……!でも、もうしょうがないじゃないか!!」

「……わたしが、こうなったのは、ふぇいすのせーじゃあないよ」

ふっ、と目を逸らされたかと思うと、フェイスは立っていたまま、私を抱きしめた。
椅子に座っていた私は、変に腰が浮いた状態になり、少し苦しい。

「お前まで軍に入る必要はなかったのかも、と最近思うんだよ。私たちは双子で、離れられない存在でも。私は男で、お前は女でしょう?お前には、女としての幸せだってあったのに」

「でも、ここに…こなきゃ…かとるやいねすには、あえなかったよ。
わたしは、いまが…しあわせだよ、……ふぇいす」

ぽろり、とフェイスを抱きしめられたまま見つめていた私の顔に、一滴涙が落ちてきた。

「…っ、ごめんなさい」

その謝罪は誰に対してなのか。

もう、面倒になって、私は目を閉じたー…。




*


こんなに無理な体勢であるにも関わらず、無防備にも寝顔を見せている愛しい片割れ。
元々、生き苦しい程に優しいこの子を、自分の為に言語障害を負わせてしまった、私の罪と罰。
何時までも、こんな体勢で居る訳にはいかないため、彼女をしっかりと抱える。

私と同じ、その黒の髪を指に絡ませ、そして、私に瓜ふたつのその顔ー…額にそっと口づけた。


「最近、夢を見るんだ。私が居なくなったら…お前が死んだら……。私なんて居ない方がいいんじゃないかって、お前の記憶から消えてしまえったらって、考えるんだ。
でも、私の心の奥の奥には、もっとドロドロしたものでいっぱいで……矛盾だね」


ふふ、と笑ってみせた。
あぁ、今はきっと酷く情けない顔をしているだろう。
優勢に思えたこの戦も、今となっては我が国が、赤の下に伏すのも時間の問題だ。
どんどん、仲間は死んでいく。
同胞たちの記憶は失われていき、地図は白から赤へ。
次第に、何故こんなにも醜い争いをしているのかも分からなくなっていく。
人を殺す感覚だけは残り、人を殺す理由は忘れていくだなんて、なんて哀しい事か。

きちんと愛しい片割れを抱え、移動しようとした時、扉が開いた。
部屋にやって来たのは、当然のように准将で……私はそっと微笑んだ。

「フェイスか」

「えぇ、はい。准将」

准将は、私と私の抱えているものを見て一旦足を止め、そして近づいてきた。
私は何も言わずに、抱えていた妹を准将に預ける。
准将はそんな私に、すこし驚いたような顔を見せたが、默して妹を抱えた。
そっと優しく。


「……准将。私は心配し過ぎなんですかね??」

「そうでもないと思うが、まぁ…今の貴様は少々鬱陶しいな」

「ふふ、鬱陶しいですか。私も考え過ぎなんでしょうね」

何時ものように、明るく振る舞うことが出来た。他から見たら、さぞかし痛々しいのだろうが、知った事じゃない。
准将も合わせて軽口だ。


「おやすみなさい、准将。妹を頼みます」

「あぁ、分かった。良い“夢”だといいな」

後もう少しー…この戦争とは関係のない“夢”から覚めたくないな、と私は苦笑いした。

准将、貴方が准将であることを幸いと思い。
貴方が私の上司であることを誇りに思い。
貴方が愛しい片割れの好い人であることを嬉しく思い、感謝しています。











仄に揺らめく、自殺志願の心持ちを准将は読み取ってくれただろうかー…。




愛してるの表現


131103    ねお

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