ぺたぺた、音が後をついて来るようだ。
室内とはいえ、裸足に白い薄い生地のシフォンワンピースという軽装で、廊下を行ったり来たりというのは寒い。
ぐるぐる、という唸りを聞いて、立ち止まる。
「おいで…?」
首を傾げてそう言えば、軍用のクァールが陰から現れてぴったりと身を寄せてきた。
ふわふわとしていて温かい。
クァールの背をそっと撫でると、また歩き出した。当たり前のようにクァールはついて来る。
「ねぇ…おまえはかとるがどこにいるかしってる?」
「グルルルル……」
「さっきまでね、ふぇいすもいたんだけどねぇ……うーん」
考えながら歩く。
傍らのクァールに聞いたとて、欲しい情報は入ってこない事は分かっていた。だが、先程まで横に居たフェイスも、気がついたら居なくなっていた為、どうしたら良いか本当に分からなくなったのだ。
「ふぇいすも…いそがしいんだよねぇ。……わたしだって、たいさなのになぁ」
その時、クァールがぴたりと停止した。
不思議に思って口を開こうとしたところで、クァールの口から今まで一度だって聞いたことのない唸り声を上げた。
モンスターに懐かれやすい体質であるため、唸り声は初めて聞くものだった。

「ねぇ、だぁれ??」

クァールの視線の先を見やると、其処には、虎の姿を模したヘルメットを被った、見知らぬ男が立っていた。

「………」

その男は黙したまま、話そうとはしなかった。
そこで、はたと思い出す。

「あっ……るしさんだね〜!!」
「グルルルルルッ」
「こぉらっ、ほえちゃだーめ」
そう言うと、クァールは吠えるのを止めた。そして、持て余したのをなだめるように背中を撫でてやった。

「ねぇ…るしさん、かとるじゅんしょおはどこにいるかしってるー??あ…もしかして、げんすい……のとこかなぁ…?」

うーん、と唸ってからそのルシに近寄っていった。ルシは近寄って来た少女に目を逸らした。

「……寒くはないのか」

ぽつり、とそのルシは言った。

「もっと…さむかった、からだいしょーぶ」
「…あんた、准将を探しているんだろ。准将なら……」

「あっ、かとるっ……!!」

正面から探していた人がやって来て、思わず飛びついた。
ルシは、へルメットの中でさぞかし目を丸くしたことだろう。

「ユリ……探したぞ。フェイスが血相を変えて飛び込んでくるものだから驚いた……あんまり心配を掛けるな」
「ほんと?あー…ごめんなさい」
「ん、顔のガーゼは取れたな。跡は残らずに済んだようだな…良かった」



忘れる前に奪いに来て



たまにはほのぼの。夢主ちゃんは頭弱いけどすげー強いって話

130929      

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