ふわふわ、と漂う雪の華が綺麗。
きらきらと反射して眩しい銀世界。
このまま此処に居たら、私の存在なんてすっかり消えてなくなってしまうかしら。
そんな事を考えれば、ぶるりと私の身が思い出した様に、寒さに震えた。
はぁ、と吐き出した息は白い。
此処に住んでいれば当たり前の事だけれど、寒いなぁ…。
両の手を合わせる様にして、少しでも寒さを紛らわせようとした。思いの外、ましだと思える。

「…此処に居たら、汚い私も純白(きれい)になれるかな……」
「我に比べれば、ユリはさほど穢れなどあるものか」

独り言として呟いた一言に、思わぬ返答があり驚いて振り向く。
振り向くと、私の15m程後ろにカトルが居た。

「…何で居るの」

少しばかりきつい言い方になってしまっただろうか。
しかし、カトルは気にする事なく歩を進める。さくり、雪を踏みしめる音が心地良い。
カトルとは同期だったが、私なんかとは違い、カトルは優れている。
頭は良く、賢い。又、白兵戦には勿論の事、機械の操縦にも優れている。
その結果、私よりも沢山のものを失い、沢山殺したかも知れない。だが、得たものの大きい筈だ。
少尉どまりな私とは違い、カトルは准将だ。羨ましい。私なんかより、ずっと、元帥の近くに在れるのだ…。

「貴様こそ、フェイスが探していたぞ」

カトルは私の横に立つと、そう言った。
そうよね、きっとそうね。
こんな私でも、戦争には少しでも役に立ったりするのよね。その他はどうとも思われていないの。

「…お願い。私をほっておいてよ」

カトルを見れば、目が合う。懇願するような、甘えるような声音で言えば、何とも言えないような寂しさに、支配されそうになった。支配されまいと笑って見れば、カトルは眉を寄せた。

「ほっておいたら、貴様は死ぬのだろう」
「…いいじゃない。私が死んだって、誰の記憶にも残らないんだから…忘れるんだから!!」

そうだ、どうせ私の事なんて忘れる。
価値のないものだ。

「…我は貴様を忘れたくなどない」

諦めるだろうと発した言葉に、思わぬ言葉が帰ってくる。え、と逸らしていた顔をカトルに合わせれば、カトルの表情はいままでで見た事のないものだった。
どきん、と心臓が主張する。

まさか…そんな、らしくない……。

「…分からない、分からないよ…。何故、貴方は真っ直ぐでいられるの……?」
「…前に一度、話した事があっただろう。……我は、軍に入る前、大きな罪を冒した。覚えてないが、そのせいで大切な妹を殺めてしまったと。


大切な人を忘れるのは、もう嫌なんだ…」

カトルのその言葉に、何かがとけた気がした。
私が、カトルの頬に手を添えると、カトルは驚いた様に目を大きく見開く。
それは、手の冷たさにか、行動にか…両方かな。

「じゃあ、頑張って生きるから…ッ!だから、貴方が私を守ってくれる…??」

カトルは静かに笑って、冷たい私を抱きしめた。















よくわからんくなった…。

130330


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