※四天王壊滅事件の後



「カヅサッ…クラサメは…!?」
ベッドの横に座っているカヅサの背中に、そう投げかけると、カヅサはゆるゆると首を左右に振った。
「…まだ、目は覚めてないよ」
「そっか…」
きゅうっ、と胸の辺りが苦しくなった。私は押し黙ると、未だ眠ったままのクラサメの近くに寄った。
右頬を覆う様に巻かれた包帯。その下には痛々しい傷跡がある。それは、仲間だった筈の朱雀四天王のひとりの、裏切りによって残された傷。
クラサメだけが生きて帰って来たのは、その事実を伝えるため。最年少での四天王であるクラサメが、ある仲間の四天王の最後の治癒魔法により、一命を取り留めたのだ。
その治癒魔法を掛けた四天王は、クラサメの恋人だったらしい。もう、覚えてなどいないけれど、私ともそれなりに親しい仲だったようだ。
「…ユリ、僕は少し出てくるから」
まるで私を気遣うように、カヅサはそう言うと部屋を後にした。


「…ぁ……ユリ……?」

俯いて、床を見つめていると、掠れた声でクラサメが私の名前を呼んだ。そのか細い声にばっ、と勢い良くベッドを見た。
「クラサメッツ!!」
クラサメは、不思議そうな顔で私と、天井を見つめた。
何故だか分からないけど、瞳から涙が溢れてきた。
「…クラサメね、四天王の中で裏切りがあって…クラサメだけが、クラサメだけが治癒魔法を掛けて貰って、生き残ったんだって…っ」
「……俺、だけが」
静かに私が頷けば、クラサメはそうか、と苦しそうに笑った。笑い方間違えてるよ、とは言えなかった。
「…もう、同じ四天王だった奴らの事なんて……治癒魔法を掛けてくれた奴の事なんて、覚えてないのにな」
「クラサメ…」
「死んだ奴の事を忘れるなんて、初めてじゃないのに…。とても…とても…苦しいんだ」
ぽつり、ぽつりと話すクラサメの表情は、とても悲惨だった。今までで、初めて見るクラサメだった。
「でも、クラサメは…生きなきゃいけないんだよ」
クラサメは生かされたのだから。
「ユリ…泣くな」
私が再び俯くと、クラサメはそう言って笑って見せた。痛々しい…笑顔だった。

「好きだよ…。好きだよ、クラサメ。
ねぇ…私と一緒に生きてよ……」


君は悲しそうに笑うんだね

クラサメさんの一人称が俺…。

130214      ねお


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