ツイッター(おそ松さん)
【花托の灰皿】

 夏の夕暮れ。帰宅したチョロ松がおそ松の行方を兄弟に聞くと、山根さんの家に行ったという。山根さんといえば近所でも有名な業突く張りの金貸し婆アだ。チョロ松は、ハッとして家を飛び出した。突っかけたサンダルは走りにくいが、おそ松が馬鹿なことをして法外な利息を取られちゃあ、チョロ松にも累が及ぶ。たまったもんじゃない。
 雑居ビルの階段を駆け上がり、チョロ松は事務所の扉を盛大に開け放った。
 夕日に赤く染まった部屋。どこか埃臭いそこは耳鳴りがするほど静かだった。いつまで経っても山根さんの悪態は飛んで来ない。それもそのはず、そこに「生きて」「居る」のはおそ松だけなのだ。それでは山根さんはというと、床に「あった」。
 チョロ松は山根さんから目が離せなかったが、視線を感じて、ようやく、おそ松を見た。おそ松はチョロ松をジッと見ていた。手には、おそ松に似合わない重そうなガラスの灰皿がある。
「チョロ松」
 チョロ松は期待した。おそ松の口から出るのはきっと、軽口に違いない。「第一発見者だよ、やべえよ、金持てるだけ持ってから、警察に通報しよう」そうに違いないのに。
「どうしよう」
 おそ松の手にあるのが、いつとのアルミの花托の灰皿なら、どんなに。



 このあと二人でぼうっとするけど、このままじゃいけないと、無い頭を振り絞るが、解決策なんて出るわけも無い。そしてチョロ松のスマホに弟から遅いと連絡が入りいよいよ切羽詰まる二人。とにかく下手に探ったような証拠を消そうと、チョロ松はタオルを探しに部屋の奥へ入る。手伝ってくれとおそ松を呼びに応接間へ戻ると、そこには外へ繋がる扉が開いたまま。おそ松の姿は忽然と消えていた。チョロ松は後を追って外へ駈け出すが、夜闇の降りた外は暗く、おそ松の背中はどこにも見えなかった。


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