(大学生)


「俺が悪かった…だからもう機嫌直せ」

 絶対に口なんて聞いてやらないと思ったのが二日前。自分は絶対に折れないと誓って一日と半分。悲しきかな、先に謝罪をのべたのは紛れもなく自分。思った以上に堪えているらしい。そんな俺を知ってか知らずか、全く口を開こうとも目を合わせようともしない頑固な三橋。
 いい加減頭にもくる。
 それを逆ギレだとか開き直りだとか言うなら言わせておくだけだ。もう堪えられない。俺は自慢じゃないが短気なんだ。
 三橋の左腕をグイッと引っ張りどうにか立たせるとそのまま玄関へと引きずる。

「なっに…俺は怒って…る!」

 抵抗されても絶対に離してなんかやらない。俺はお前に身長も体重も体格も抜かされたことなんか無いんだ。抗っても結局は俺には勝てない。それを知ってか知らずかそこまで暴れたりせずに三橋はついてくる。

「知ってる、散歩いくぞ散歩っ」
「はえ?…おっ俺いかなっ」

 玄関でクロックスを履いた俺を見て三橋はグッと引っ張って抵抗を見せた。それでも玄関に引っ張り無理矢理クロックスを履かせようともがく。

「お前もいくんだって、」
「なっ!かっ…あべくっ、勝手だっ…かってっ」
「何とでも言え、行くぞ」

 色違いで買ったクロックスを三橋にどうにか突っ掛けて、三橋の左手を握って、鍵も忘れずにかける。
 辺りは真っ暗で夜な筈なのにまだ昼間のような蒸し暑さだった。でも、時折通り抜ける生暖かい風が今の俺には丁度良かった。
 切れかけたアパートの証明を抜けてアスファルトをあてもなく歩く。俺の少し後ろで歩く三橋と俺が繋いだ手は暑さからかどちらともいわずしっとりと濡れていた。チラリと後ろを見ると俯いていて表情が見えない。まぁ、泣いてはいないだろう。
 意外にもコイツは頑固というか意志が強いのだと知ったのは高校で付き合い始めてからだったなと、ボンヤリと月と星を見ながら思って、ふっと笑いが出た。

「な、に…」
「ん…いや、俺…三橋のこと好きだなって、」

 歩きながらそう言うとグイッと引っ張られて、三橋と向き合った。

「かっ勝手だ…」
「うん、」

 そうだな。何て言いながら三橋の頬に触れる。

「ごめん…俺…お前に無視されんのが一番堪えんだ」

 仲直りしよ。そう言って三橋の頭を撫でた。三橋は繋いだままの手に力を込めて、こくんと頷いた。

「んじゃ、仲直りがてらに…星見ながら散歩しよ」

 三橋の手をまた引いて歩き始めると、今度はピッタリくっついて歩く三橋に笑った。

「阿部くん…」
「ん?」
「クロックス…逆だよ」

 三橋に言われてそう言えばなんだか少し窮屈だとは思った。足がはみ出てら。三橋の赤いやつだ。
 二人で歩いてると隣からなんかキュッキュと変な音が鳴ってる。俺の黒いやつ、俺が履いても少し大きいからな、変に空気が入って歩きにくいんだ三橋には。

「ま、こんなんも、いいんじゃね」

 楽しいし。と、言うと三橋は阿部くんは勝手だと言って、でも、大好きだと呟いた。






(0818)
またしても喧嘩の話(?)。喧嘩が一方的だった彼らが同等に喧嘩してるのが好きで。喧嘩が出来るってことはね、いいことだ←
クロックス履いてる三橋と阿部が書きたかっただけだけど←
クロックス、キュッていうかプッとか変な音がなりませんか?土踏まずとクロックスが密封状態みたいになって…え、アタシだけ?←


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