「いやーやっぱり、匂いは大事だろ」

 世良の言葉に赤崎は眉を歪めて飲み終わったペットボトルをクシャリと潰してから、変態くせえと呟いた。赤崎の言葉に直ぐ様反応したのはやはり世良でペットボトルを捨てにいく赤崎の後ろ姿に怒声を浴びせる。それにからからと笑ったのは湯沢と宮野で世良の怒りは二人にも向けられた。

 就寝にはまだ早いと寮の自動販売機の前のテレビが置かれたスペースに集まるのは一種の癖で、今日は世良、赤崎、湯沢、宮野、椿という面々だった。暫くテレビを見ていたのだが、テレビでフェチの話が流れ世良が反応したのが始まりだった。


「じゃーお前らはなんもねーんだな?!」
「やー、まあ…俺はそうだな…血管ッスかね…肌が白いと目立つじゃねーっスか、あれ萌えです」

 湯沢が世良さんよりセーフでしょ、と前のめりに乗り出していた体をソファーに再度沈めて堂々と言ったのを聞き、宮野は吹き出し世良はお前の方が変態だアウト萌えとか言うなキモいと罵声を飛ばした。三人、主に世良がギャーギャーと騒ぎ始めたのを無視して赤崎は逆側のソファーに深く腰掛け体育座りをしてテレビと睡魔と格闘している椿の隣にドカリと腰掛けた。

「ふあ、…あ、ザキさん…」
「眠いなら寝ろって」

 赤崎の言葉に頭をカクンと前に傾けながらもそれを定位置に戻して首を横に振る。瞼は完全に閉じている。皆が寝るときに一緒に移動しますとモゴモゴと伝えまた黙る。そんな椿に溜め息をついてからテレビに目を向ける。しかしテレビの内容はさして興味の惹かれるものではなく、赤崎は椿をもう一度みる。閉じられた瞼を縁取る睫毛はキラキラと涙の雫で濡れていた。目元は赤く、何度か欠伸を堪えては擦ったのだろうことが容易に分かった。唇は薄く開いて規則正しく呼吸をしている。
 スポーツ選手にしては華奢で成長途中であるが、それでも鍛えてある足を曲げ膝に顎をのせ体を丸めている。この寒い中でも半パンで裸足の足先には片方だけスリッパが引っ掛かっている。もう片方はソファーの下に投げ出されていた。足は所謂靴下焼けをしていて元の肌の白さが際立つ。いつだったか脛毛を世良によって剃られた椿の足をみて地肌の白さに度肝を抜かれたことがあったっけなと変なことを思い出す。あれは今言ってしまえば、興奮していた。
 そこまで考えてハッとする。とんだ変態だ。赤崎は片方の手のひらで顔を覆い溜め息を吐く。

「あー…」

 世良さん達がおかしなことをぬかすからだ。あと椿の格好だ。赤崎はそう決定付けてからもう一度椿を見る。

「ん…ザキさん…おれ…寝てない…ッス…」

 椿のそんな寝言が鼓膜に響いたとたん身体中の血液が沸騰する。ああもういい加減にしてくれよと赤崎はソファーに沈みこみ両の腕で顔を隠す。

「そーいや、赤崎ー!お前こそなにフェチなんだよ!」

 頭上で世良の煩いキンキンとした声が響いたが、それでも椿の赤崎の名前を呼ぶ声が耳から離れなくて、オマケに惜し気もなく出された椿の足、足首が脳裏を掠める。そう言えば足の速いやつは、足首が細いとか聞く。だから足首細いのか…なんてことを思ったらもう何だかそれしか考えられない。

 椿はさっきから寝てるとして、なにこいつ床にずり落ちてんの?寝てんのこいつ。という世良の声に、いつの間にか床にソファーからずり落ちていたらしい。それすらも分からないほど頭の中は椿のことだらけで本当に勘弁してほしい。

「声と…足…くび」
「は」

 二度も言える筈がない。口を紡ぐと暫くの静寂。そして宮野の噴き出す声と世良と湯沢の笑い声。笑いたきゃ笑えよ。赤崎はソファーに後頭部を沈めながらすぐ横にある椿の足首を複雑な表情を浮かべ見詰めた。



フェティシズム


(120328)
赤崎は椿フェチ。
私的に足ってか足首フェチだと思ってます赤崎は。
そんな私は声と匂いと筋←
結構まえに書いてたやつ短い

壱汰
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