愛しの7番に
キスをする10題

注意→!
足先に忠誠を誓うキスをする(湯沢)
薬指に永遠を願うキスをする(堺)
手の甲に約束のキスをする(王子)
背中に欲望のキスをする(持田)
首筋に所有の証のキスをする(達海)
頬にありがとうのキスをする(丹波)
唇に愛を確かめ合うキスをする(世良)
瞼の上におまじないのキスをする(宮野)
髪に切望のキスをする(上田)
噛みつくようなキスで(赤崎)

title by>>>Aコース








(湯沢)
「あの…ユザさん…」
 椿は栗色の髪を見つめながらオドオドと湯沢の名前を呼んだ。湯沢は椿の右足首を入念に触診していたが深く溜め息を吐き出して大丈夫そうだと小さく呟いた。そしてベンチに座ってどうしようかと焦っている椿を見上げた。椿はビクリと肩を上下させ、掴んでいた足首も跳ねさせた。湯沢はそれに小さく笑って優しく椿の足首、足の甲を撫でた。それがどこか気恥ずかしくて椿は身じろぐ。
「もう…大丈夫ですよ?」
「ん、そーらしいな」
 練習後の自主練で、帰りが遅いと迎えにきた湯沢に駆け寄ろうとしてボールに躓いて前のめりに転けた。別に派手に転んだわりにどこも痛くなかったのだが、支えられなくて悪いと本気で沈んでしまった湯沢に焦って首を横に振っている間に担がれ、クラブハウスのロッカールームに連れ込まれた。そしてベンチに降ろされスパイクと靴下をひんむかれ、今に至るのだ。右の足首を入念に診られたのは、湯沢の冷えた手のひらが足首に触れて過剰に反応してしまっただけなのだが。今更言えないと椿は困ったように湯沢を見つめる。
「も、大丈夫ッス」
 椿は湯沢の肩を押して立ち上がろうとしたが湯沢に足を掬われて視界が反転する。背中を打ち付けて痛みをやり過ごしてから目を開くと、クラブハウスの天井とニコリと笑う湯沢がいた。ベンチに押し倒され左足の上に湯沢が腰を降ろしている。痛くはないが重い。
「ユザさん?」
「大事にしろよ…俺が正ゴールキーパーになってお前の後ろは守ってやる、お前がこの足で前に進めるように、さ」
「っ…ユザさ…へ?…ちょっ…やっ…」
 グッと太ももを掴まれて足を上げさせられる。スルスルと手を滑らせて足首を掴まれて背筋がゾワリと粟立つ。なにする気ですか。という言葉は湯沢が椿の足の甲に舌を這わしたことによって喉の奥に引っ込んだ。
「ひっ…なに考えてっ…汚いっスよ!」
 ジタバタともがくが右足は掴まれ左足には湯沢が乗っていてうまく起き上がれない。
「つばき」
 いきなりの湯沢の低い声と真面目な顔に椿は暴れるのをやめ湯沢を見つめる。
「つばき、俺、早くお前と同じピッチに立てるようにするから」
 お前はこの足でピッチに立ち続けろよ。そう言って湯沢は椿の右足の指先にソッと口づけた。
「っ〜!!」
 椿は両腕で真っ赤であろう顔を隠し、ユザさんは格好いいのか変態なのか分かんないですと呟いた。その呟きに格好いいと変態は紙一重でしょうと真っ赤になっている椿の腕をなんとか外し、恥ずかしさで涙目の椿に笑って、今度は唇に口づけた。

足先に忠誠を誓うキスをする


(堺)

 風呂から上がってリビングを見渡す。すぐに目的の真っ黒の髪の毛を見つけてソッと息を吐く。この時間にどこかに行ってしまうはずなんて無いのに、いつも少しだけ不安になる。
 堺はソファに寝転がっている椿の肩を揺する。

「椿…」
「ん…んん…さか…い…さん…」

 うっすらと瞼を開けてこちらを見上げる。目元が赤く色付き開かれた瞳はとろんとしている。ほうっておけばまた眠りについてしまうだろう。腕を掴むがぐにゃりと力が入っていない。こんなに飲ませたのはどこのどいつだと堺は小さく舌打ちした。
 若手で飲みがあると申し訳なさそうに眉を下げた椿に、迎えに行ってやるよと伝えたのがかれこれ六時間前。宮野から電話がかかってきたのが二時間前のこと。ぐでんぐでんに酔った椿を連れて帰り、風呂に入れ服を着せ頭まで乾かしてやった。

「こら、椿…布団でねとけっていったろ」
「さかいさん…すき」

 椿を抱き上げようとした手が止まる。年甲斐もなく、赤面。身体の奥から熱が込み上げてくる。へたりと床に腰を下ろした。赤い目元を撫でると瞼を閉じたまま擦り寄ってくる。勘弁してくれ。
 堺は椿の左手をやんわりと撫でる。薬指を指の腹でこする。擽ったいのか少しだけ浮上した意識の椿と目がかち合う。

「おれも…すき」

 薬指に唇を寄せ啄むと、見る見るうちに椿の顔、手が赤くなる。可愛いやつ。堺は膝を立て椿の耳元に唇を寄せ言葉を紡ぐ。
 きっと椿は涙目で俺の好きな下手くそな笑顔を向けるだろう。

薬指に永遠を願うキスをする



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