(R)

 真っ赤な耳を撫でて、椿。と名前を呼ぶと、ふるりと肩を震わせる。瞳には涙の膜がはっていていやに扇情的だとゴクリと喉が鳴った。それが響いて誤魔化すために、熱い吐息を吐き出す椿の唇に唇を寄せ噛みつくようにキスをする。唇を食むと絡めた手のひらがヒクリと跳ねた。シーツに押し付けるように強く握るとしっとりと汗ばんでいて、さらに握りこむ。鼻を擦り合わせる位置で瞳を覗き込むとポロリと涙が零れた。それがあまりにも綺麗だ、なんて思った。

「大丈夫か、」

 零れた涙を拭いながら頬に手を添える。大丈夫か、なんてなんの意味もない言葉をただ紡ぐ。馬鹿げている。する側よりされる側の負担の方が大きいのなんて当たり前だ。リスクをおかしてまで椿に辛い思いをさせるなんてそれこそ本当に馬鹿げていると思う。男同士の時点で非生産的な行いだ。出来ることならここで椿のモノを抜いて俺のモノもどうにか抑えこんで、やめてやりたいといつも思う。

「ザキさん…大丈夫です」

 大丈夫ですから。いつも椿はそう言って笑うのだ。大丈夫なはずなんて何処にもありはしないのに。こいつは大丈夫だと言う。それでも、俺は椿を欲していて。矛盾している。性欲というやつは本当に厄介だ。

「ああ…」

 椿の額に張りついた髪の毛をかきあげて額に唇を押し付ける。髪の毛を撫でてさっき時間をかけて解しておいた後ろの孔に指をもう一度差し込む。

「っん…はっ」
「手…つけるか」

ぐずぐずに蕩けたそこを掻き回すと堪らないといったように椿が震える。身体を支えて後ろからと思っていたのだが椿が繋いだ手を離そうとしない。どうしたのかと顔を覗き込むとキスされた。

「つばき?」
「このまま…このままが……いいっス」

 ザキさんの顔見ときたいです。カァッと身体中に熱がこもる。どうなっても知らねーからなと椿の太ももを抱え身体を埋める。

「ッ…ふ…あ」
「…つばき…」

 ぼろぼろと流す涙が痛々しくて落ち着かせるために顔中にキスを落とす。それでも腰は止まらなくてごめんなと小さく呟くとギュッと閉じていた瞳が開いてまた涙が大きな瞳から零れた。

「ふっあ…ンッ…ザキさ、ん…すき…すき」

 好きですと何度も言う椿にゾクリと背に何かが這ったような感覚がし、呆気なく椿の中に精液を吐き出していた。溜まっていたのか止めたくとも止まらず、椿も身震いして俺と自分の腹に飛沫を飛ばした。
 それがあまりにも早急で、暫く二人で顔を見合わせていた。そしてどちらともいわず吹き出した。

「はは…すげーかっこわりーな俺…犬みてぇ」

 呼吸が整わないまま椿の首筋に顔を埋める。汗の匂いと精液と椿の香りに身体中が満たされる。暫く本当の犬のようにすんすんと匂いを嗅いでいると椿がグッと肩を押し返してくる。

「はっ…恥ずかしいっス」
「なんで」
「なっなんでって…」

 何ででもっスという椿の手をもう片方と同じ様に絡めてシーツに押し付け、また首筋に顔を埋める。今度は椿の匂いだけに満たされる。

「もっ…ザキさんっ」
「…好きだ、椿」

 すげーお前のこと好き。と今度は椿の顔を見て言う。目を更に大きく開き瞬きをして、椿はふにゃりと緊張感の無い顔で笑った。嗚呼、俺はこの顔が本当に好きだ。愛しいと思う。そんなことを思いながらまた首筋に顔を埋め、今度は唇を落としながら何度も好きだと告げた。みるみる首筋まで赤くなってきて、その肌に吸い付くとしょっぱい筈なのに酷く甘い味がした。


この瞬間がたまらなく愛しい



(110927)
付き合いたての初々しいザキバキでもと思ったんですけども。椿視点を書こうと思いましたがどうだろう。

壱汰

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