面白くないんだよねえ。真っ白なソファーに横たわる王子はさながら本物の王子様で(あながち嘘ではない)暫く何を言われたか分からなくてその優雅な姿を見つめていた。すると、僕に見惚れるのはいいけど話を聞かないのはいただけないよと顎をスルリと撫でられて肩が跳ねた。

「王子…何が面白くないんですか?」
「…なんだ、聞いてたの」

 趣味が悪いんだからともう一度だけ撫でられて王子の綺麗な長い指は離れた。

「強いて言えばそうだね、この一見緩やかな時の流れかな」
「はあ、」

 時々というかほとんど王子の話は巧妙すぎてというのか突拍子過ぎて凡人の俺には理解しきれないことが多い。とにかくこのオフという時間が王子には退屈らしい。

「すみません、俺がいるせいで」
「ちょっとやめてよね、そのネガティブ思考」

 この素晴らしきオフという時間を共に過ごす人物をこの僕は君を選んだんだ、そこは恥ずべきところじゃない。むしろ誇るべきところだと、王子はソファーの横の床に座っている俺の頭を今度は撫でた。そして頭を撫でた指先はスルリと首筋に移動してゆるゆると撫でられる。背筋がゾワゾワと際立つ。

「お…うじ」

 喉元を犬を撫でるように擦られツーッと唇に指が触れる。喋ることも儘ならなくてされるがままだ。

「ん…」

 唇を指の腹で撫でられてふにりと挟まれ弄ばれる。チラリと王子を盗み見ると心底楽しそうな表情をしていてドクリと変に心臓が跳ねた。

「…楽しいですか」

 唇から離れた指先を追うように熱くなった息を吐き出してしまって、恥ずかしくて言葉を紡ぐ。

「そうだねえ、それなりに…ねえ」

 君はどうなの、バッキーと手をひかれて膝立ちなって王子と向き合う。指を絡めて逆の手で唇にまた触れられる。あろうことか指が口腔に入り込んできて舌に触れる。

「ん…む…」
「ほら、おいでよ」

 掴まれた腕を引き寄せられて王子の腹部に跨がる形になる。

「んっ…」

 指に舌を這わすと王子はよりいっそう笑みを深める。

「しかけたのはそっちだよバッキー?」

 そう言って王子は指を口腔から引き抜いて、一気に顔をこちらに近づける。きっとキスをされるんだと思って瞼を閉じたのに一向にそんな気配はない。そろりと開くと目前に王子の整った顔。

「ど…して、」
「言ったじゃないかいバッキー、しかけたのはそっちだって」

 王子はそう言って綺麗な笑みを向けてくる。俺はというと顔に熱がこもるのをそのままに王子の肩に腕を回して唇を王子の綺麗に弧を描いたそれに押し付けた。

「そうこなくっちゃね」

 離れた唇からそう紡いだ王子の唇を食むようにまた口づけた。



しかけたのはそっち


(110919)
ジノバキは大抵こんな感じを妄想。ジノ←バキが強いのが好みですがきっとジノ→バキも強いんだろーな。これ前も書いたおぼえが。

壱汰

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