※カレーパーティーの話の捏造



 監督の意向でカレーパーティーをすることになったらしい。黒田によって顔に押し付けられたチラシを椿はボンヤリと見つめていた。が、黒田の声に驚いてチラシをぶちまけそうになった。

「ぎゃはははは!赤崎っざまーねえな!」
「はあ…?……見たところあんたも、こきつかわれてるようにしか見えねーんスけど」
「ぐっ」

 赤崎達は買い物袋を提げていて達海に言われたカレーの材料だと、世良の持つ袋から覗いているニンジンを見て思った。赤崎達は買い出し組らしい。暫く言い合いをしていた二人に杉江が止めに入るやいなや黒田は弾かれたように、傍観に徹していた椿のもとへとずんずんと歩き怯えた椿の肩を引き寄せた。

「椿!いくぞっ」
「へ…あっはいいっ!」

 情けない声を出すなと怒鳴られながら黒田に肩を抱かれて半強制的にひきづられていく。隣で赤崎許さんと言う黒田の声と、大人げないという杉江の声が交差した。




「あ、あの…カレー…どーですかぁー…」

 自分でも酷いと思う。声は小さいしオドオドしてて、手なんか震えてたりする。誰がチラシを手に取ろうなんて思うだろうか。それでも浅草の人は優しい。差し出したチラシをソッと受け取ってくれる。これは、頑張らねばと声を張ろうとした瞬間、椿は大声でまた名前を呼ばれた。今度は黒田じゃなく三人の子ども達に。

「つばきーっ!」
「へぁあっ…」

 何してるのーだとか椿だーだとか服を引っ張られながら言われて椿はオドオドしながらもチラシを見せる。

「あの、カレーパーティーするから…えーっと、はいどうぞ」

 真ん中にいたコータにチラシを渡すと顔を寄せあってチラシを見つめていてなんだか可愛いなと椿は三人をジッと見つめていた。椿もいるの?とおもむろに聞かれ反射的に首を縦にふってうんと言うと嬉しそうな顔を向けられて椿はなんだか嬉しくて笑った。

「わっ!椿が笑った!」
「えっ」
「すげー!なんかすげー!俺ら絶対行くから!!待っててね椿!」

 チラシを残りの二人にも渡して手を振られたので手を振り返す。三人は今にも転けてしまうんじゃないかと思うぐらいにじゃれあいながら人混みに消えてしまった。
 さて、残りのチラシを頑張ってさばかなければならないと椿はカレーパーティーでーす。と先程と変わらない気もする声でチラシを配る。要はやる気の問題で、さっきよりやる気満々だと笑顔で努める。チラシは気付いたら残り一枚となっていた。

「椿、」
「はいっス!カレーパーティーでーす………っ…あ、」

 名前を呼ばれて笑顔でチラシを差し出すと快く受け取ってもらえ最後の一枚だししっかりと顔を見てもう一度どうですかーと言おうと意気込んで見上げた先にいた人物に椿はグッと息を飲んだ。

「へえ、意外。ちゃんと笑顔で配れてんじゃん」
「ざっ…ザキさんっ」

 チラシで口元を隠してこちらを見ているのはさっき買い出しから帰って黒田と言い合いをしていた人物、赤崎だった。その肩が少しだけ震えているのと、目元にシワがよっていて赤崎が笑っていることが見てとれて、椿は顔を染めながら笑わないで下さいと赤崎を脅し程度に睨んだ。耳まで赤くして睨んでもなんら恐怖など感じるはずもなく赤崎はチラシを筒状に丸めて椿の額に押し付けた。

「なっ、い、いたいっス」
「ぶは、バカ面」
「っ…ひ、ひどいっス」

 ショックをうける椿の額からチラシをのけると丸く跡が残っていて赤崎はまた笑った。椿はバッと手を額に当て、何しにきたんですかと声をあげた。

「や、なんか手伝わされそうだったし逃げてきた」
「もっ、もうこっちも終わりました」

 そう言った椿にそうみたいだなと椿の空いた腕をチラリとみて赤崎は椿に持っていたチラシを返す。

「ほら、早くそれ配って帰るぞ」
「えっ、終わったと思ったのに…」

 椿は心底ショックを受けたという顔をして赤崎をジッと見つめる。見ても駄目だと赤崎は笑って、あそこにいる子どもにでもあげてこいと母親と一緒にいる子どもを指差した。椿は指差したら駄目ですと赤崎の手を握ってパッと離した。赤崎は椿の行動に驚いてガチリと固まったが椿は気にすることもなくその子どもと母親のところに行き二、三言葉を交わして帰ってきた。

「あれ、なんで固まってるんですかザキさん」
「なんでもねーって…帰るぞ」
「え、あ、はい…あ、俺気づいたんですけど」

 赤崎の隣を歩きながら椿は赤崎ににっこりと笑いかける。

「ザキさん、俺のこと心配して来てくれたんですね」
「ばっ…違う……別にお前が声かけられてねーかとか…俺は気にしてねーよ」
「…え、いや俺は俺がドンクサイから全部配り終わるまでに時間掛かっちゃうからとか…」

 歩みをいきなりやめた赤崎を不思議に思って椿が声をかけると真っ赤になった赤崎がそっぽを向いていたので椿も釣られて赤くなる。

「お、俺男です」
「知ってるよ」
「あ…でっでも、俺もザキさんモテちゃうから…心配になって…みにきちゃうかも…です!」

 そう言った椿をいまここで抱き締めてやりたいという衝動をどうにか内に押さえ込みながら赤崎は可愛くはにかむ横顔を見つめていた。が、いきなり横っ面を何かによってはたかれた。暫く頬を押さえて固まっていたがグワッとはたいただろう人物の方を睨んだ。

「ぎゃはははは!バカ崎!みたかっ!紙の威力!!」
「……」

 黒田が紙の束を振りながら赤崎と椿の前に立ちはだかる。ザキさん駄目ですよ!と椿が黒田に飛びかかろうとする赤崎のジャージを掴む。

「はっ、黒田さんチラシ残ってんじゃないスか、どーせ受け取ってもらえなかったんスね」
「うぐっ…んだと赤崎!!」

 こんなところで喧嘩はやめろと杉江が間に入り、椿は赤崎のジャージをぎゅうぎゅうと掴む。

「も、ザキさんっカレーパーティーの準備しに帰るみたいですよっ」

 いつの間にやら黒田を止めに来た上田や熊田もいて、ぎゃーぎゃーと騒ぐ黒田の声は遠ざかっていった。赤崎と椿はETUジャージの塊の少し後ろをついて歩く。

「頬っぺた大丈夫ですか?」
「んー、ああ…それよかお前…本当に、絡まれたりしてねーだろーな」

 だから、大丈夫ですってば。と、椿はほんのりと頬を染める。そして、でもザキさんが心配してくれて俺嬉しいです。とはにかんだ椿に赤崎は目眩を覚える。このまま二人でボイコットなんて駄目だろうかと本気で考えていた赤崎に椿はそーいえば声掛けられましたと満面の笑みで赤崎に言う。

「はあ?誰に」
「えへへー…男の子達ですよ」

 ほらいつも応援とか来てくれてる三人組の。と椿が答えるとそんなのも居たなと赤崎はボンヤリと覚えている範囲で三人組を頭に描いた。

「よし、俺がサインしといてやるよお前の代わりに」
「なんスかそれ、大人気ないっス」

 椿はケラケラと笑う。それに赤崎は大人気なくて結構とポケットに手を突っ込んだ。



大人気ない大人


(110918)
そのあと本気で「えー赤崎じゃなくて椿とか王子のサインー」とか言うコータ達に自分のサインする赤崎さん。というのは赤崎マジで残念なんで、きちんと赤崎のが欲しいと言われたんですよきっと(^^)
カレーパーティーの時、赤崎と椿が別行動だったのが辛いなと思ってたので(^^)書いちゃいました。
かなり三枚目な赤崎さんですwww椿のことガチで天使なんじゃないのとか思ってますねこの赤崎さん(^^)それでこそ赤崎っ
もう引っ付いてますザキバキ。

壱汰

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