いつかはそう言われるって思ってたんだ。そう言って笑った宮野はいつもの宮野で、優しい掌で俺の頭を撫でた。宮野のベッドの上で二人とも下着だけの姿で、宮野は胡座をかいて自分は壁に背を預けて体育座りをして隣り合って座っている。俺は先刻、宮野に向けて言葉を投げた。それを宮野がどう受け取ったのか、宮野の表情からは見てとれない。ずるずると続いた身体だけの関係に宮野はどう思っているのだろうか。自分はどう思っているのか、実際は分かっていない。

「ごめん…、」
「だからさ、椿が謝ることないよ」

 俺も、椿を利用させてもらったんだから。宮野の言葉に俯くことしか出来ない。宮野は別れた彼女の代わりに、俺は、ザキさんの代わりに。そうだ、自分は宮野をチームメイトを利用したのだ。言葉として出された二文字は重く自分へとのし掛かってきて、目に涙が溜まってきた。泣くのは卑怯だと思いながらも止めることは困難で、唯一の救いとして、膝を抱えたまま膝に額を付け顔を埋めているので宮野からは自分の顔は見えない。ギシリとベッドを軋ませて宮野が起き上がるのを耳の端で聞く。次いで布擦れの音がし始めて服を着ているのだと分かった。沈黙が辛くて口を出た言葉に宮野が反応してくれて安心する。それがすぐに間違いだったと気づいた時には全てが遅かった。

「みや…彼女とは?」
「彼女、……ああ、あれね、」

 嘘なんだ。その言葉に勢いよく顔をあげると宮野の泣きそうな、辛そうな表情が飛び込んできた。しかしそれもすぐに引っ込んで服を着終わりにっこりと笑う宮野が今はベッドの横に立っている。顔をあげたことで涙が頬を滑り落ち慌てて掌で拭う。それに宮野はなに泣いてんのとまた笑った。

「みや…」
「俺ね…」

 言葉を遮るようにギシリとまたベッドを揺らして乗り、宮野が俺へと手を伸ばした。スルリと頬に手を添えられて宮野の顔が近いななんて思っていたら唇の端に柔らかい何かが掠めて、すぐに離れていった。

「椿の事が好きだったよ、」

 そう言った宮野の顔がさっきの一瞬見せた顔と一緒で、喉が焼けるように熱くなって上手く呼吸が出来なかった。声も喉に張り付いたみたいに出てこなくて頭が真っ白になって気づけば、宮野の腕の中にいた。宮野の肩越しに自分の服が散らばっていて、今さらになって事の重大さに気が付いた気がした。よくも自分は宮野に、この関係を止めようなどと言えたものだと思う。

「ごめん…な、冗談だよ…冗談だ」

 冗談だけど、疲れたみたいだからさ今だけはこのままでいさせてよ椿。そう言った宮野の身体は震えていて、それでも自分は宮野の背中を抱き返すことも擦ることも、そんな資格すらなくて、ただただ泣くことしか出来なかった。

「…明日からは、チームメイトで、友達に戻るから…今だけは」

 宮野の泣きそうな顔も声も何一つ知らなかった。初めてだった。それがリアルに、自分たちの関係を物語っているようだと思った。


終焉を迎えた僕らは


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(110411)
長らくお待たせしました。いや、もう忘れられたのではないかと思っておりますが。漸く書きました。本当は別の終止符の打ち方でした。というか宮野視点でもっとこう…暗い暗い話でしたが急遽変更しました。しかし、また改良してこの話の宮野視点として書き直します。
2.5みたいな感じで。あと話がよく繋がらないと思いますが、どんなことがあったのかも書くつもりです。
というか、すみません。お待たせした結果これって。
一応情事後ですね。情事は宮野視点にでも入れられたらどっかに。このあとまたヤっちゃうってのもいいかなとかうん。思っておりますが、とりあえず赤崎出ます、次の話には(´ω`)2.5みたいになったら分かりませんがとりあえずでます。
本当は宮野にずっと告白させないつもりでしたが。させました。じゃないと報われなさすぎて。しかし過去形で嘘ついて頂きました。
椿が愚かな子ですねすみません。

壱汰


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