「あらら、やっちゃったね」
「う、あ、なんかフラフラ…たんしゃん達が二人ずつ…」

 座敷で椿を囲んで飲んでいたんだけど、思いの外椿の酒の廻りが早くて俺と丹さんは椿の介抱に早くも手を焼いていた。

「つーばーきい…酔うのはえーだろ」
「そーいう丹さんも酔ってんでしょ」

 俺の言葉には聞く耳持たない丹さんは椿の顔にお絞りを押し当てては嬉しそうに椿で遊んでた。俺はそんな二人を見て温くなったビールを飲み干した。すると、先程椿から奪った携帯が再び鳴った。
 練習が終わってから無性に飲みたくなった俺と丹さんは一人でモタモタと着替えていた椿をロッカールームから拉致し、アワアワと焦る椿に酒を飲ました。飲み屋についてからひっきりなしに携帯が鳴るので、椿がその度にモタモタとメールを返すもんだから携帯を奪うことにした。相手は絶対に見ないで下さいと椿にしては必死な形相で迫られたのでそのままポケットにいれていたのだ。飲んでる最中は気にしないようにしていたが、椿が潰れた今となっては気になる。それは丹さんも同じ様で、二人して椿を挟んだまま鳴りやんだ携帯を潰れた椿の目の前に置く。

「寝てんな…」

 丹さんのそんな言葉に頷き二人してニヤリと顔を見合わせて笑った。二人でチカチカと着信を示す携帯を覗き込んで、ボタンを押す。直ぐに着信を示す画面が現れて知った名前に固まった。隣の椿は机に突っ伏したままで、その先の丹さんも固まったのを目の端で確認した。

「なんで赤崎?」

 偶然だろうと前の履歴を見てみるがズラッと並んだ赤崎遼の名前で軽くひいた。椿になにか用事があるんだと思いメールの内容も見てやった。そこには、いまどこだとか誰といるんだとか、簡素な文面だからかなんなのか分からないが椿が半場泣きながら返している姿を見ていたので、これは恐いなと笑ってしまった。何だか彼女に怒ってメールする男みたいで赤崎コエーとからからとまた笑うと何かを考えていたのか丹さんが眉をしかめながら呟いた言葉に、自分でも疑問に思っていたが絶対に行き着きたくない何かがその先に垣間見えるような気がしたので言わないようにしていたのにと、ボンヤリと携帯を見つめて思った。

「赤崎なら、別に隠すこと無くねぇ?」

 丹さんのそんな言葉にやっぱり小さく頷くことしか出来なくて、その言葉の先の意味に薄々感ずかされてしまったとゆっくりと丹さんをみやった。丹さんはと言うと今にも泣きそうな顔でジョッキを掴んだままジッと携帯を見つめていた。俺もこんな顔してんのかなあと肩をすくめて飲み屋の戸がガラガラと音をたてるのを何処か遠く離れた所から聞いているようなそんな不安定な状態で聞いていた。

「やっぱりここっすか」

 ダイレクトに耳に飛び込んできた声に肩を奮わせて咄嗟に椿の携帯をひっ掴み椿の足の上にそっと置いた。後ろを振り向くと案の定椿の携帯に表示されていた男が後ろに突っ立っていた。

「あかさき…」
「世話かけました、丹さん、ガミさん…おい、椿帰るぞ」
「は…へ…?…な、れ…ザキさんが?」
「うるせー馬鹿」

 座敷に膝をついて上がってきた赤崎がぐでんぐでんになっている椿の腕を引っ張って、その反動で落ちた携帯を拾って椿のポケットにでもと手を伸ばしたら赤崎に携帯を奪われた。携帯は赤崎の後ろポケットにスルリと入って、それをボンヤリと目で追っていたら椿がフラフラしながらも立ち上がりモタモタと靴をはく。

「ここ割勘っすよねいくらっすか?」

 赤崎は椿を座らせてから自分も靴をはきながら俺に向かってそう声をかけてきた。自分の財布を取り出した赤崎に俺はケチな赤崎がなんで財布だしてんの。と思ったことが口に出ていたのか、赤崎が眉をしかめてた。

「別に、後で貰いますよ」
「え、ああ…そう…あ、俺らが出しとくからいーよ」
「そっすか…こいつ変な飲み方すっとすぐに酔うんすよ…酒事態に弱くはねーんだけどあんま種類飲むと…」

 丹さんとガミさんと一緒だって聞いてまさかと思ったんすけどと言うもんだから、俺達のことなんだと思ってんだよと反論したら無視しやがった。つくづく可愛くない奴だと思う。

「じゃあ、俺ら帰るんで」
「ちょおっとまて…お前らってさ」

 椿に肩を貸して立ち上がった赤崎に、さっきまで黙っていた丹さんがいきなり喋り始めた。俺も赤崎も丹さんの方を見る。えらい目が座ってる様に見えるのは俺だけかな。

「できてんの…?」
「……」

 嗚呼、言っちゃったよ。俺は椿の飲み掛けのチューハイを飲み干した。

「…どーなの」
「…あんた酔ってますね、」

 話にならないと悟ったのか、赤崎はお疲れ様ですと言って椿を引きずる様に飲み屋を出ていった。
 俺はというと、出ていった二人を見ていたんだけど、隣からガチャンと言う派手な音が鳴ったのでそちらを向く。空のジョッキを持ったまま丹さんが机に突っ伏していた。丹さん寝ないでよと肩を揺すると、鼻を啜る音が響いて頭をかいた。

「あーやべーな、酔ったかも…」
「だから酔ってるつったじゃない丹さん。泣かないでよ」
「俺ぁ、酔ったら泣くんだよっ泣き上戸ってやつだ」

 あんた酔っても酔わなくても笑い上戸じゃないとは言わないで、優しく背を擦ってあげることにした。

「はいはい、俺だって下手したら泣きそうっすよ」
「お前の話は知らん…ぐすっ」
「ひでーなあ、」



嘘つき上戸


(110331)
ザキバキ←ガミさん丹さんの図が好きらしく。
ゆーて何を書きたかったのか分からなかった(´・ω・`)
椿はお酒弱くても強くてもいいのよね(^ω^)

壱汰


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