「って……いってー」
隣で着替えていた椿からそんな声が聞こえて、見ると口元を押さえて眉をしかめていた。此方が見ていることに気付いたのか、何でもありませんと首を振った。また何か隠してんなと内心溜め息をつきながら椿の手を引っ張る。此方によろめきつつ体勢を整えた椿の唇から血が滲んでいた。
「ンだよ…口切れてんじゃねーか、練習中か?」
「や、多分カサカサだったんでそれで切れたんだと」
ペロリと舌が唇を舐める。何だか居たたまれない気持ちになって目線をそらして、リップは。とぶっきらぼうに言った。それに椿は何も言わず、横目で見ると首を傾げていた。短気な俺は、リップだよと自分の鞄を探りリップを椿の目の前に出した。
「や…リップは分かりますけど…持ってはないです」
俺が信じられないという顔をしていたのだろうか椿がすみませんを連呼してきた。
「なんであやまんだよ…ま、いーよ、塗っとけよソレ」
椿にリップを渡し服を着替えていないことに気が付き上着を脱ぎさった。椿も、ありがとうございますザキさんとかなんとか言ってリップを塗っていた。
「赤崎ぃ」
一部始終を見ていたのか世良さんがいきなり俺と椿の間に割って入って、物凄く嫌な笑みで此方を見た。
「なんスか世良さん…」
「んー?」
「あ、ありがとうございましたザキさん」
椿がリップを手渡してきたのでソレを受け取ろうと手を伸ばす。
「お前らさ…間接キスじゃね?」
俺の受け取ろうとする手と椿の渡そうとする手がピタリと止まった。
「は?」
「いや、ソレ」
世良さんの指先がリップを指差す。俺は何を馬鹿なことをと世良さんをジロリと睨んでから椿を見た。参った。何でそんな耳まで真っ赤にしてんだよ。こっちまでつられるっつーのっ。
俺は椿からリップを奪い取り着替えを再開した。世良さんにはペットボトル回し飲みすっでしょと言ってから、一蹴り入れて追い返した。
着替えにもたついていた俺と椿は最後に取り残された。ここで普通にお疲れだとか言って寮に戻ればよかった。チラリと椿を見たのが悪かった。
「なっんでまだ赤いんだよっ」
「うっわわっ…すみませ…なんか…恥ずかしっ…いってぇー」
口を大きく開けすぎたのかまた同じとこが切れたらしく椿が口を押さえる。ううっと唸りながら目尻に涙をためている。
「っ…くそ」
椿の両手を掴み唇を唇に押し当てた。唇を抉じ開けて舌を絡める。十分に口腔を堪能してから角度を変え唇の傷口を見つけて舌を這わせる。ピクリと震えた椿を無視して鉄の味がする唇を舐め、口腔に再度滑り込む。
「ンッ…は…あ…ザキさ…血の味…」
「っ…だな…」
最後に唇を舐めて離れると、また椿は顔を赤くした。
「…っし…椿、帰るぞ」
「あの…どこに」
「俺の部屋っ」
言わせんな。と、言ってからリップを取り出して、椿の顎を掬う。驚いた顔をしたままの椿にリップを塗ってやる。簡単にやらせる椿が可笑しくて笑ってから、俺も。と言って椿にキスをした。
メンソレータムキス
(101201)拍手ログ
赤崎はリップを持ってると断言できる(^q^)と思って出来た文。男物リップ赤崎(^q^)←
間接キスてなんだこの中坊みたいな二人と一人。笑
壱汰