最近の歌に疎い自分は勿論恋人が好きなアーティストだとか好きな曲だとか、聞いたとしても理解出来ないだろう。でもベッドの上に腰掛けてパラリと雑誌を読む彼の右耳にはイヤホンがつけられている。もう片方はベッドの上に投げ出されたままで、僅かにだが音がもれていた。雑誌を捲る指先がメロディーに合わせてリズムを取っていて、要するに彼は今、音楽に夢中なのだ。
 自分はというと、床に座って雑誌を読んでいたのだがベッドの上に投げ出されたイヤホンから流れる洋楽だろうかなんだか分からないけど、それが気になってずっとそちらに目がいっていた。

「椿…」
「…う…あっはい!」

 いきなり声をかけられザキさんを見上げる。ザキさんはというとこちらをジッと見て手招きをしてきた。
「あ…え…?」

 焦っていたら、早くしろと言われてまた雑誌に視線を戻した。俺はキシリとベッドを軋ませながら乗り、ザキさんの隣に腰掛けた。一瞬驚いたという顔を此方に向けたがすぐにニヤリと笑ったザキさんが近すぎて、いささか目眩がした。少し前までこんな大胆な行動、強要されなければ出来なかったのに、自然に出来るようになるなんて。今でも不思議だ。

「なに、赤くなってんの」
 ザキさんの右肩に額を押し当てて、赤くないですと言うとひんやりとした手に耳たぶを摘ままれ、嘘つきと耳元で囁かれた。

「っ…うー…」
「はは、」

 バッと離れると面白いとばかりに破顔するザキさんは、俺の左耳にイヤホンをつけた。流れてくる異国の音楽は、聴いたことがないものだったけれど、とても心地好くてザキさんらしいと何となく思ってしまった。

「この歌…なんか…好き、」

 そんなことを呟いてザキさんの肩に寄り添って音楽に聞き入っていたら、大介と名前を呼ばれ困惑している間に唇にキスをされた。何が起こったか分からなくて暫く固まっていたのだが、可笑しそうに笑っているザキさんに、音楽に後押しされるようにキスを仕返した。



君のきな唄


(101121)
ザキバキ\(^^)/で仲良く音楽聴いてんのが書きたかった。むしろイヤホンを一緒に聴いてるのが書きたかった。

壱汰

thanksBGM:君の好きなうた


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