「なんで、」
「は、ここ俺の風呂」

 さも当たり前の様に言い切ったザキさんを湯船に浸かりながら放心状態で見る。ザキさんはすぐに頭を洗い終わって体を擦り始めた。

「ほら、ボケッとしてんなよ…頭まだだろ」
「う、あ、はいっ」

 体だけ擦って入ったことも当たり前の様に知っているザキさんに驚きながらも、男性二人が入るようには出来ていないお風呂の作りながらもザキさんがシャワーの方を空けてくれたのでお邪魔する。ザキさんは頭も体もササッと洗って湯船にも長くは浸からない。こんなことを知っているなんて結構長い間、ザキさんの近くにいるのだと思って勝手に赤くなる。幸いお湯をかぶってリンスを流している最中だったので良かった。
 髪の毛を適当に絞って横を向くと、後ろにいたザキさんが湯船に浸かっていたので目が合った。浴槽は男性一人でも足を少し曲げなければ入れない狭さで、今はザキさんで定員オーバーだ。

「えっと、俺、先に上がりますね」
「…おい」

 腕を引っ張られ何事かとザキさんを見ると、風呂浸からねーと風邪ひくだろと怒られた。いや、でも、と、口ごもっているといーからココと、指差されたのはザキさんの足の間。

「は、」

 漸く理解して身体中熱くて、主にザキさんが掴んでいる腕から熱が発せられているようだった。どうしていいか分からずオロオロしていたらぐっと引っ張られて、あっという間に自分は湯船のザキさんの足の間へと座り込んでいた。二人ぶんの体積にお湯があとからあとから浴槽から出ていった。

「ほら、冷えちまっただろ」

 脇腹に手を回され背中がザキさんの胸板にピタリと付く。ザキさんが腰に巻いているタオルが腰を擦るのに鳥肌がたつ。早く上がりたくて既に逆上せた様に視界がぶれた。

「なに、緊張してんの」

 今さら、と、鼻で笑われて、いよいよ恥ずかしくて涙が零れた。ザキさんはすぐに気がついて、なに泣いてんだと顎を掬ってきて強引に横を向かせられる。

「ばーか、泣くなって」
「だ…て、恥ずかし…ス」

 隠すとこしっかり隠してんじゃん。とわけの分からないフォローをされて涙も引っ込んで反論した。

「いつも、上がるの早いじゃないですか…というか、ザキさんが先に入れって言ったんです、よ」
「たまにはいーだろ」

 なんスかそれ。と言葉を紡ごうとしたらグイとまた顔を横に向けられて唇を塞がれた。
 すぐに離されて、俺は入りきらなかった俺とザキさんの足をジッと見つめることしか出来なかった。

「お、黙った」

 首筋の辺りで楽しそうに言うザキさんを無視することにし、足を抱えてだんまりを決め込む。するとスルリと足に手を這わされ後ろからギュッと抱き締められた。

「ちょっ、ザキさ…んぅ」

 うなじに舌を這わされ次には甘く噛まれて変な声が漏れた。両手で口を押さえるが、ザキさんはお構いなしに舌を這わして最後に、チュッと浴槽に響かせるように吸い付いて離れた。

「ばっ……」
「ば?」
「ザキさん…の、バカ……後ろ…」
「あ?」

 当たってます。と言うと、しょうがないだろお前のせいだ。と、顎を肩に乗せそう言った。もう恥ずかしくて頭がボーッとしてわけがわからなくなってきた。

「は、椿…ちょ、」

 ザキさんの焦った声がどんどん遠退いて、プツリと目の前が白んだ。




「う、」
「…目、覚めた?」

 ひんやりとしたザキさんの手のひらが額、頬を撫でたのが気持ち良くて、気だるい体を動かして手を重ねて擦りよった。完全に無意識だった。

「っ…」
「きもち…………うっわ、すっすみませっ」

 バッと手を払った瞬間、両手に手をあわされて、ギシリとベッドが沈んだ。そこでやっと、自分はさっき逆上せてベッドで伸びていたんだと悟った。ザキさんと紡ごうとした唇は唇によって塞がれて、次には熱い舌がぬるりと入り込んできた。今の自分には拒む力すらなかった。

「…んにゅ…ふ…ぁ」
「わり、」

 散々口腔と唇を舐められたり吸われたりの繰り返しで、また逆上せたようだった。重みが消えてもう一度ベッドが軋んだ。ザキさんがベッドに腰かけて優しく頬を撫でる。今の自分の顔は涙と涎、おまけに鼻水でぐしゃぐしゃだと思うのに、ザキさんの指先は耳たぶに移動し、ゆるゆると愛撫して耳元で信じられない言葉を何かの呪文みたいに紡いだ。

「かわいい、つばき…」
「っ…ザキさんの…バカ」
「お前、そればっかだな、」

 ザキさんのせいです。と、顔を両腕で隠しながら言うと、ザキさんが優しく笑った気がして、チラリと腕の隙間から覗いてみた。すると視線の先にザキさんが居なくて、首を傾げて腕を外すと、意外にもすぐ近くにいて、また唇を塞がれた。

「もっ…やだ、ザキさんと風呂入りません」

 録なことがないとそっぽを向くと、よいしょとザキさんがベッドに再び入ってきた。なにしてんですかと腕をザキさんの胸に当て突っぱねると、ニッとザキさんが笑う。

「入らねーなら、いまヤる」
「はっ、やだっ、ザキさんの…けっけだものっ」
「お前…誰の入れ知恵だ」
「なっ、知りません」

 ザキさんは言わねーなら見えるとこに跡つけるからなと笑って、首筋に唇を押し当てた。おまけにうなじのさっき付けられた跡を指で愛撫するものだから簡単に折れることになった。

「うう…世良さんに…」
「まー大方その辺りだと思った。で、入るんだろまた。」

 実に嬉しそうなザキさんの鼻の頭に歯をたててから、変なことしないならと呟いた。
 そのあとすぐに変なことについて具体的例をあげさせられるなんて思いもしなかったけれど。


スクエアにて心中



(110304)
お友達のL7の管理人、りょーちゃんが素敵な湯船ザキバキを描いてたから、書かさせてもらいました(*´д`*)
なんとっ壱汰にプレゼントしてくれるとかりょーちゃん優しい(*´д`*)
というわけですが、中途半端なザキバキになってしまった。素敵なイラストのイメージを壊さないか心配(´・ω・`)

りょーちゃんのみお持ち帰りで。

壱汰

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