(赤崎、姉弟捏造)
クラブハウスの玄関に厳重そうな大きな箱が置かれていて、なにごとかと目を見はっていたら、箱と箱の間から永田さんがにょきりと顔を覗かせた。パチリと視線があってニンマリと笑顔を向けられて、なにか悪い予感がしつつも、手招きされ永田さんに近寄った。
「はい、椿くん」
「え、」
手伝ってね。そう言って渡されたものはとても懐かしいもので、暫くみいってしまった。
「め、びな…?」
「わ、椿くんよく知ってるね」
それはそこに置いてねゆっくりだよと言う永田さんはとても嬉しそうだった。俺は女雛をゆっくりと男雛の隣に置く。黒の漆の段は立派で、花弁など色々な模様が金粉であしらわれていてとても綺麗だった。
「やっぱり、嬉しいですか」
「え?」
「や、あの…嬉しそうだなって」
桃の花を渡されそっと置く。永田さんは嬉しそう?と、少し気恥ずかしげにはにかんだ。これね、ずっと家の倉庫に眠ってたのをお父さんが出してやれって。1日だけここでむさ苦しい男達にも見せてやれってことでここに置いてるんだよ。永田さんは口を動かしながらもテキパキと人形などを置いていった。
「できた」
満足した様にもう一度全体を見渡した永田さんは、ありがとう助かったよ椿くんと言ってから袋をズイッと手渡してきた。
「…ひなあられ」
「そ、手伝ってくれたお礼だよ」
ピンクや緑、白と淡い色のあられが袋の中に広がっていた。ジッと見ていたのに永田さんは可笑しそうに笑って、段ボールを隅に寄せてから、じゃあ仕事があるから、ありがとう椿くんと言って、パタパタと足音をたてながら行ってしまった。俺はひなあられを持ったままその場に残されてしまい、せっかくだからと立派な七段の雛人形を見ることにした。
「懐かしい…な」
ひな祭りは女の子の祭りってことで姉さんが羨ましいなんて思ってたっけ。雛人形には絶対に触らせて貰えなかったし。幼稚園からは。
「なにしてんの」
「う、わ、ざっザキさん、あ」
いきなりかけれた声に驚いてひなあられを取り落としてしまったが、ひなあられはザキさんの手のひらにおさまって思わず拍手してしまった。それに呆れた様にため息をついたザキさんはひなあられを俺の頭へと置いた。手を伸ばして受けとるともう一度、なにしてんのと言われた。
「や、ちょっとお雛様を」
「あー、今年も、スゲーな」
今年もという言葉に去年もそうだったのかと、もう一度ザキさんの視線の先を見詰めた。
「懐かしくて、」
「ああ、お前、姉いたんだっけ」
俺が3才で姉が幼稚園の時は姉が男勝りっていうかそんな感じで、俺が雛人形飾ってました母さんと。でも姉が小学校入ってからは一切触るなって言われて。本当に久しぶりに雛人形飾りました。
「お前って、」
ザキさんは口元を片手で隠しながら肩をふるわせて期待を裏切らないなと笑っていた。なんだか凄く恥ずかしいことを言った様でブワッと顔に熱が篭る。
「きっ聞かなかったこと、に」
「まー待てって」
逃げようとしたのをザキさんの腕に寄って肩を抱かれてその場に止まることとなった。
「俺も、姉いるけど…まあ俺はしてないけど弟がほとんどしてたな、雛飾り」
男勝りってかアイツは男だと暫く思ってたよ俺は。ザキさんは何かを思い出した様にまた、ため息をついた。
「お前さ、姉に着せ替えとかされてた質だろ」
ニッと笑ったザキさんに俺は焦ることしか出来ず、観念して、幼稚園までですよ。と、口を尖らせた。何が可笑しいのか吹き出して肩を抱いたままぷるぷるとふるえだした。
「ザキさん失礼です」
「いや、あまりにもまんまで、」
「ザキさんは、お姉さんに喧嘩で勝ったことなさそうですよね、」
冗談で言ったことが図星だったらしくピタリと止まったザキさんに顔がにやけてしまった。それを見られて、ザキさんが腕の力を強めて、顔を近付けてきて、笑いやがったなとすごんだ。
「な、んで、ザキさんだけ怒るんスかっ」
「生意気なんだよ椿のくせに」
ぎゅうぎゅうと首を絞められて痛いですと騒ぐと、ザキさんに耳元で言われた言葉に、ザキさんじゃないけど、ピタリと止まった。
「…笑わないですか」
「話による、」
「…じゃあ…ザキさんの話もしてください」
「笑わないならな、」
話によります。と言ったら、生意気と言われてまた首を絞められて、手に持ったひなあられが袋の中で大きく揺れた。
『お前の小さい時の話聞きたいんだけど、』
桃色日和
*なぜに桃の節句の文を間に合わせたのか自分でもw一応フリーです(´Д`)
壱汰も姉と弟いますが、姉と私は男勝りで、幼稚園の弟がニコニコしながらお雛様飾ってました(*´д`*)あの頃は可愛かった。今も可愛いですが(ブラコンめ)
とりあえず、椿はそんな感じじゃないかなとw赤崎は一人っ子だと思っていますが、姉弟いたらいいなって話です(´ω`)
弟は龍くんで(´ω`)龍くんは大きくなるにつれて顔が赤崎に近づいたと。きっと小さい頃は可愛かったとw
フリー期間
2011年3月3日〜4月1日
壱汰