(R)
無意味な行為。男同士のセックスなんてそんなもんだ。何が形として産まれてくるわけでも無いし、誰もが無意味だとそう思うかもしれない。それでも自分は満たされていると感じてしまっているのはきっと、目の前にした彼自身を好いているからだとそう思った。
「んっ…ん、っ…うう、み、や…」
同い年の同じ男だとは思えない程、手に馴染む綺麗な肌に宮野は目眩を覚えながらも手と舌を這わす。するとヒクリと喉を鳴らして椿は身体をふるわせ、鼻にかかった切なげな声をもらす。それに身体中が熱を持ったように熱くなると、毎度逆上せたかのようになる頭を宮野は少しだけ横に振ることで冷ました。
「椿…いーよ、名前呼んで…俺今から黙ってるし」
「で…も……」
「そういう約束だろ、」
タオルで目を隠した椿の頭をなるべく優しい手つきで撫でる。余裕だと振る舞ってはいるが、今にも出てしまいそうな自分のモノに少しだけ笑う。流れた雰囲気を感じ取ったのか首を傾げ、タオルを取ろうと手を伸ばした椿の手をシーツに縫い付けて、なんでもないよと言う。再度頭を撫でてから、慣らしていた椿の窪みに昂りを押し当てる。ピクリと震えた足を抱えて上からゆっくりと挿入する。
「っ…あっあっ…んんっ…っあ…ザキさんっ…」
「っ……」
驚くぐらい狭くて熱い椿の中が気持ち良くて声がもれるのを唇を噛んで堪える。足を更に抱えて深くまで進入すると喉をそらせて喘ぐ。それだけで自分は興奮が抑えられなくて椿の身体の心配を頭の隅に寄せて、ガツガツと腰を揺らす。そうしないと、泣いてしまいそうだった。
「っあ…ふ、やっ…ふかっ…ンンッ…ザキさっ」
同じチームの先輩の名前を切なげに紡ぐ唇を塞いでしまいたかった。椿は名前を呼ぶ度に興奮するのか先端から蜜を溢れさせる。黒い感情が渦巻く。醜い、椿を裏切る嫉妬だと分かっている。その感情を振り払うために唇を強めに噛む。
「ふっ…うぁあ…」
この奇妙な関係を終わらせたいと思うのに終わらせたくなんかないとも思っている。唇を噛み締めて椿の中を抉る。椿は爪先を目一杯伸ばしてから精液を吐き出した。宮野は椿の肌に滴る精液を見つめ椿の中へと精液を吐き出す。精液が肉壁に飛沫するたび跳ねる身体が綺麗だと宮野は愛しげに椿の肌をゆっくりと撫でた。
「み、や…」
タオルを取ってやり涙で濡れた目尻を親指で擦ってやる。睫毛がシットリと濡れていて宮野は綺麗だと呟いた。
「ん、え?」
「いや…風呂入ってきたら?」
聞こえなかったのだろう宮野は内心ホッとして椿に笑った。
「…うん、あ、宮…唇切れてる」
「え…ああ、大丈夫」
舌で唇を舐めると鉄の味が広がる。心配そうに顔を近づけてきた椿に宮野はビクリと震え椿の肩を押してベッドから降りた。
「みや…?」
「ごめん、先に顔だけ洗わせて」
「う、ん…宮っ」
今触られでもしたらぶちまけてしまいそうだった。黒い感情を。そんなことを考えながら洗面所に向かう宮野に椿は声を大にして宮野を呼ぶ。
「宮…ごめん…」
「…なに…言ってんだ…よ…それ言わない約束だろ」
笑えていただろうか。宮野は洗面所の鏡を見つめそんなことを思った。鏡に映った自分の顔は、今にも泣きだしてしまいそうなそんな情けない顔だった。それを隠すために、無理に笑ってみたが一筋涙が頬を伝って、それに驚いた瞬間にぶわりと涙が溢れた。
「…ちくしょう、」
シャワーを一気に出して呟きをかき消してから宮野はシャワーヘッドを持ち、頭を洗面台に近づけ水を頭からかぶった。涙は水に流れて分からなくなった。
涙さえ無意味に終わる
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(110119)
やってしまいました。一応連載ですがやってしまった感がすごいです。えっとミヤバキではなく、赤崎←椿←宮野という話です。最終的にザキバキになると思います。宮野が報われません全く。赤崎がノンケです。それでも大丈夫だと言われる方はお付き合い下さると幸せです。
壱汰