気付いたら眠ってしまったらしく椿は浮上した意識のまましっかりと覚醒するまで、薄ボンヤリと見える天井を見ていた。暫くして慣れた瞳が映したのは自分の寮の天井でないことに気が付きハテナを浮かべたが、隣に眠る人物を横目で捕らえ一気に顔に熱が集中した。下手に動いてしまうと起こしてしまうと思ったが、寝ている人物の方へと寝返りをうった。

(寝てる…な、村越さん)

 余り見ることができない村越の寝顔が珍しくて暫く見つめていたが、今の自分の状況を思いだし、その顔も見ることが難しくなった。ここは村越の部屋で寝室で二人して裸同然の格好でベッドに寝ているなんて。そう考えて顔に熱が集まった。
 大人、だな…村越さんは。そう思った理由は、とても自然な形で椿は腕枕というものをされているということからだ。それが、男の自分からして情けないやら恥ずかしいやらで椿は手で顔を覆った。

「っ…」

 暫く、顔を覆っていた椿だったが目を瞑ると昨夜の記憶が自分の頭にダイレクトに流れ込んできて、洒落にならないと手を外した。するといつの間にかボンヤリとライトが点けられていて少しだけ目が眩んだ。

「っわわ…村越さ…」

 目の前にいつのまにやら目を醒ましていた村越がいて、椿は奇声を発した。それにまだ開ききっていない目を片方瞑りながら村越は片方の口角だけ器用にあげて男くさく笑った。

「どうした、」
「っ…すっみません…なんにも…てか、枕…」

 そう言葉にすると恥ずかしさが増したのか咄嗟に隠れるために、椿は村越の胸板に顔をうずめた。椿は自分の行動に驚きすぐに離れようと村越の胸板に手をつき身体を離そうとしたが、村越の腕がそれを阻止し、逆に両腕で胸板に押し付けられるように抱き込められた。

「まだ眠いんだろ、椿」

 前髪をかきあげられ、額にゆるりとキスを落としながら村越は、無理をさせたな。と小さく囁いた。
 村越の起き抜けの甘く掠れた声に椿はふるりと小さく震え、村越の背にゆっくりと手を伸ばした。

「村越さんは…狡いです」
 椿は村越が何がだと聞く前に、かっこいい大人って感じで狡いです、余裕だってあるし。と、額をグリグリと村越の胸板に擦り付けながら呟いた。

「なんだそれ…普通に何歳離れてると…」
「違いますよ…」

 俺はいつまでたっても大人になれない気がします。と呟いた椿の頭をゆるりと撫でて村越は口元を歪め笑った。

「…お前の方が…十分余裕そうだろ」

 そう言ってから椿がバッと顔を向けてきたので村越は椿の額を手でペチリと叩き寝るぞと瞼を閉じた。

「あ…の…気持ち良かったですか?」
「……おまえ…」

 人が気を利かせたというのに何を言うんだと、閉じた瞳を開けると唇にふにゃりと温かく柔らかいものが掠め村越は固まることしかできなかった。
 椿は顔を赤に染めながら気恥ずかしそうに笑って、寝ましょうか。と呟いた。
「いま何時だ?」
「へ…えと…6時過ぎです」

 椿は身体を少し浮かしベッドの隣にある時計を手にとった。しかし、すぐにそれは村越によって奪われ、椿はベッドへと逆戻りした。村越は椿の顔の両端に手をつき上から椿を見下ろしていた。

「…今日がオフでよかったよ」

 驚いたままの椿の鼻の頭に犬歯を当て舌で舐めると椿の目が更に驚きで丸くなった。それに口端をあげて笑う。

「村越さ…ん…」
「お前といると…余裕なんてすぐに捨てるさ」

 そう言った村越の唇に言葉を呑み込まれた瞬間に、さっきまで点いていた灯りが消され、椿はやっぱり余裕じゃないですかと、思ったが村越の舌に答えることに専念するとすぐに頭の端から消えていった。


大人になりたい
ピーターパン



(101214)
コシバキは最初にハマったカプです実は\(^^)/
王道だと思ってました。
でもすぐコシタツが王道なのかなーとかも思ってたらなんか色々違った(^q^)
でもコシバキ大好きです。余裕のあるないのコシバキ。
今回は文の書き方をかえました。読みにくかったらすみません(__)


壱汰

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