分かってる。知ってる。頑張ってる。どれもこれも陳腐な言葉で、声をかけることができない。自分は彼になにをしてあげられるのだろうか。無性に、泣きたくなった。


涙しか溢せない浅はかなぼく


 ドリさんの怪我の状態を聞いて、ドリさんに怪我をさせてしまったのは自分の責任だと彼を目の前にして呟くと、優しく頬を叩かれた。自惚れるなよって。その後に叩いてごめんねと頬を撫でられたっけ。大きな身体に体当たりしてわんわん泣いた。過ぎてしまったことだが、自分じゃない誰かに迷惑をかけたということが視界にある事実だと知ると、やはり勝手に不安になってしまった。勝手な自分が嫌で、お前のせいだと言ってもらえた方が幾らか楽で、でもだれもそう言ってはくれなくて…。泣くのは卑怯だと自分でも分かってる。
 それでも彼は大きな手で抱き締めて頭を撫でてくれた。
 そして、泣き喚いた俺に静かに誓いをたてた。俺がお前の、チームの後ろは護ってやる。涙でぼやけていたけれど、いつもの緩々とした優しい眼差しは無く、闘志を込めた熱い眼差しがそこにはあって、ドクリと心臓が跳ねた。ユザさんのあんなに真剣な眼をみたことがないように感じた。


 ゴールキーパー佐野。監督の言葉に俺は隣に座るユザさんを見られなかった。代わりに膝の上に乗せていた手をみると、握りしめたまま震えていて、また目を逸らしてしまった。何もできない。何も言えない。あれだけ頑張っていた彼を知っているから余計に自分はしてあげられることがない。泣きたくなった。
 ユニフォームのままロッカーで座り込んだまま動かないユザさんに何人かの先輩達は肩を叩いて二、三何かを口にしていた。ユザさんはその時だけは顔をあげて苦笑いでお礼を言っていた。そんなユザさんを見ていたから最後に残ったのは、俺とユザさんの二人。
 ベンチに腰掛けて床を見つめているユザさんは俺がいることを知っているのだろうか。俺は着替えも中途半端に足がユザさんの隣りに向かっていた。止められなかった。きっと放っておいて欲しいだろう。自分だったらそうだ。でも、無理だった。
 ベンチをぎしりと揺らし隣りに腰掛ける。服の裾を掴む。ボンヤリとしたユザさんの瞳が俺を映した。映してくれたことに、また、泣きたくなった。

「はは、何つー格好してんの、」

 誘ってるのかと思った。笑おうとしているけど、上手く笑えていない。きっとそんなことにも気づいていないのだろう。

「…さそ…ってます」

 裾を引っ張って、ユザさんの手から床に落ちたキーパーグローブを見つめたままそんなことを口にする。ユザさんからの言葉は無く、俺はチラリと下からユザさんの表情を伺い、自分の浅はかさに嫌気がさした。凄く、困った様なやりきれない様なそんな顔。なんだかとても悲しくなった。



「ンッ…んん…あっ」

 片脚をユザさんの肩に抱えられ上から抽挿を繰り返される。内臓を押し上げては出ていくその動きに感じるのは苦痛でないのがまた嫌になる。

「…はっ…椿…」

 耳元で名前を呼ばれると、きゅうきゅうと精液を搾り取ろうとするかの様に勝手に蠢く窪みに恥ずかしくなって顔を腕で隠す。するとユザさんの長い指が胸の突起に触れ、捏ねたり摘まんだりを繰り返してくる。驚いてユザさんを見上げると目の前にいて唇を塞がれた。ヌルリと舌が割り込んできて口腔を舐められる。涎が口の端から零れても深く舌を絡められ舌を吸われる。甘い痺れが身体中を駆け巡る。
 自分の性器が痛いくらいに腫れていて触りたくて手を伸ばす。するとその手を掴まれて、もう片方の足も肩に抱えられ、必然的に腰が浮きユザさんの性器が奥深くに挿入してくる。いきなりのことでしばらく上手く息ができなかった。

「けほっ…あっ…やっやだ…」

 生理的に零れる涙で目の前のユザさんの顔がぼやける。まだ動かないでという言葉は、熱っぽく蕩けた瞳のユザさんが男くさくニヤリと笑ったのを合図に熱気に溶けてしまった。

「あっあっ…ひっ…」
「はっ…つばき…つばき」

 熱に浮かされたように俺の名前を呼んでくる。この体制ではユザさんの顔もあまり見えなければキスもできない。

「ユザさっ…ユザさんっ…かおみたい」
「っ…」

 ユザさんは俺の腕を引っ張って、ベンチに座った。その上に跨ることになって自分の重さで深く性器が突き刺さる。触ってもいないのにぶるりと震えて精液をユザさんの腹と俺の腹に飛ばしてしまった。それでもユザさんは下から突くのをやめてくれなくて口から喘ぎ声が止まら無い。それが嫌で唇を噛むとリップ音を響かせて啄ばむ様にユザさんがキスをしてくる。閉じていた瞼を開けて焦点を合わせてユザさんを見つめると、自分の唇をペロリと舐めて小さく笑みを向けて、何度もキスを繰り返してきた。ユザさんの首と頭に両腕を回して自分からキスをしようと顔を近づけると、下から突き上げてくる。

「ひあっ…ひど…いッス…ふっあ…」
「はは…椿が…はあ…声我慢するから…ん、」

 ユザさんのサラサラの髪の毛に両手を差し込みグイッと後頭部を押してキスを無理やりすると、キスしながらユザさんが笑ったような気がした。髪の毛から背中へと手を伸ばし背を引っ掻く。ユザさんの唇が胸の突起を含み舌で転がすのが堪らなくて、ユザさんの頭にしがみ付くと腰を掴まれて注挿が速くなる。ユザさんの匂いと汗の匂いに興奮して腰が勝手に動いてぎゅうぎゅうと瞑った瞼の裏がパチパチとスパークする。ドロリと精液が噴き出して身体中が痙攣する。ユザさんの顔を見ると気持ち良さそうに震えていて唾液を交換する様に深くキスをすると俺の中で漸くユザさんは精液を吐き出した。断続的に吐き出される精液が肉壁を刺激する度にビクビクと震える俺にユザさんは耳元で可愛いと囁いた。

「っ…あ、お腹」
「くだったらごめんね」

 後で掻き出してあげるよとボンヤリと言うユザさんがいつものユザさんでぎゅうぎゅうと抱きつく。どうしたの?とお腹の辺りで笑うユザさんに少しだけ涙が零れた。

「泣いてるの?」
「泣いて…ないッス」

 ユザさんは俺の服を整えてくれて足の間に俺を座らせて後ろから抱き締めてきた。首筋に顔を埋めて落ち着くと呟いて黙り込んでしまった。沈黙が今は苦しくて俺から話しかけた。

「ユザさん…呆れましたよね」
「なんで?」
「だって…俺が……誘ってますっていった後…すごい顔してた…」
「ん?…あー、どんな顔してた?つーかお前にあんなこと言わせるようじゃあダメだなって凹みはしたけど」
「ゆっユザさんの表情よくわかんないッス…ユザさん…凹んでんのに…えっちなこと…したい奴だって…思われたかなって」

 そう言った後にまた妙な沈黙。不思議に思って恐る恐る後ろを振り向くと片手で口元を覆っているユザさんがいた。

「あー……なあ、椿」
「?」
「…エッチなことって、もっかい言ってよ」
「…は?……っ!!」

 驚いていると、ちゅっとキスをされて、ふにゃりとした緊張感の無い笑顔を向けられた。

「俺が馬鹿みたいに凹んでる時はさ、そばに居てよ、そしたらさ、また頑張るから」
「…ウス」

 恥ずかしくて熱くなる顔に両手を当ててユザさんに背中を預ける。

「あーでも、明日の試合はさ、誰かさんが累積食らってるから一緒にいらんねーのか」
「うぐ…」
「はは、なら今日は明日の分いろよ?で、明日は俺が試合に出ても出なくてもお前から電話しろ」

 分かりましたと言うと満足した様に笑ってもう一回しようかと耳元で囁いてきた。


(130428)
終わりが見えなくてどうした!ってなりました。18、19巻のあたりのユザバキでしたー。無性に書きたくなるユザバキ。
着替え途中の椿は下はユニと裸足で上はユニ片手だけ脱いで首の辺りまで捲ってる格好です。すぐ脱がされましたけども。
ロッカールームのベンチの上とか無理だから床でしょうね。男二人とかベンチ壊れる。


壱汰
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