※モニネタバレ有り(捏造)


 まだ耳に残っている。テレビの向こうで紡がれた自分の名前。思い出してぶるりと鳥肌が立つ。寝返りをうって手を組む。ジトリと汗ばんでいるのが分かる。心臓の音が煩い。隣に居るだろうザキさんの寝息は聞こえないが、寝ているのだろう。自分に背を向けているので分からない。
 明日は、合宿へと出発する。寮からクラブハウスまでの道中に何かあってはいけないと永田さんが簡易ベッドを用意してくれた。クラブハウスの一室。いつもと違う場所だからなのか。眠れない。

 椿はベッドから起き上がり、携帯をポケットに忍ばせて部屋を出る。廊下側で良かった。すんなりと廊下に出られた。
 廊下はしんとしていて、暗闇が続く。自分の足先すら見えない。壁を探るとすぐに壁に触れて少しだけホッとする。そのまま壁を伝いながら外に出る。ザッと夏の風が吹き抜けた。
 今日は新月だ。星の光がいつも以上に自分に届いているような気がした。梯子に足をかけて屋上のアスファルトに座り込む。ごろりと寝転がって空を見上げてすぐに目を閉じた。星が降ってくる。そんな気がしたからだ。実際は、周りの明かりの反射でそんなに星は見えやしないのだけれど。それでも瞼の中の星空は今にも降ってきそうだった。

「…つばき?」
「っ!?」

 驚いた。飛び起きた俺の目に飛び込んできたのは満天の宙でも彗星でもなくて、さっきまで隣のベッドで眠っていただろう、ザキさんだった。心臓がドクドクと脈打つ。目を見開いている俺をよそに、ザキさんは俺の隣に腰掛けてごろりと寝転がった。自分はというと、ぽかんと、空を見上げるザキさんの横顔を見つめていた。咎められると、そう思っていたのに。明日は初日だぞ意識が足りないだとか。そういうことをわざわざ言いにきてくれたのかと。本人に言うとすごく怒られるから言わないけど、ザキさんは世話焼きさんだ。一つしか違わないのに。大人だな、なんて何回、何百回と思ったかしれない。

「なあ、知ってたか?」

 ザキさんは子どもの様に笑って空から視線を俺に移した。まだ心臓はおさまらない。

「ここ、倉庫にさ…望遠鏡あるんだ」
「望遠鏡…?」
「そ、結構性能いーやつ」

 こないだ倉庫掃除をさせられた時に見つけたんだと楽しそうに歯を見せて笑った。こういう、なんていうか。年相応、もしくは少しだけ子どもっぽく笑うザキさんが好きだ、なんて思う。

 星。望遠鏡。そのキーワードをどこかで聴いたことがあって、ザキさんの隣に自分も寝転がって空を見上げる。
 そうだ、あれは、いつかザキさんのヘッドホンから漏れていたその曲。リズムだけのそれが気になって、歌詞が知りたくてザキさんを見たら、笑ってイヤフォンに変えてくれて一緒に何度も繰り返して聴いた。爽快なナンバーが頭の中をリフレインする。

「…っ」

 おかしいくらいに身体が反応した。絡められた指先が震えた。心臓は、おさまりっこない。

「帰ってきたら、さ。星…もっとよく見たくねえ?」
「星…」
「そうだな、午前二時頃とか…さ」

 考えていたことが読まれたのかとそんな有り得ないことを考えながら横を見ると、ザキさんの横顔に変わりはなかった。けれど、ザキさんの瞳に無数の星の光が反射しているようにみえて、この人と同じものを見ていられるという幸福感に、なんだかとても愛おしくなった。


午前二時のスターゲイザー



(121124)
公式が楽しすぎて派生した捏造。とりあえず、久しぶりに曲を聴いて、あーやっぱりいーなあ。ってことで、使わせていただきました。
ザキバキってなんだか支え合って迷惑掛け合ってまた支え合って…なんていうかまだまだ子どもなんだなぁという。とりあえず赤崎も椿も今回は同じ景色に立っていられるんだなと、公式見て興奮した結果が回りくどい話になりましたはい。

壱汰

ThanxBGM.天体観測
 

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