ザキさんの部屋に来るようになってから随分と時間が経った。最初の頃は迷惑なんじゃないかとかそんなことばかり思ってて、居心地悪かったのに、今はとっても居心地がいい。ザキさんは今シャワー浴びてて、やることがない俺は勝手知ったる様に台所を漁ってコーヒーなんてものをいれてみたりしている。
 なんていうか、いいなあ。穏やか。台に腕と片方の頬を引っ付けてカップの蓋を撫で、そんなことを思った。

「椿…」

 頭上からかけられた声に反応して見上げると濡れた髪を乱雑にタオルで拭いているザキさんがいた。タオルの隙間からチラチラ覗くいつもは鋭い瞳が今日は少し優しいもので、さらにふっと優しく笑った。ああ、やばい。この笑顔好き。

「なに…惚れ直した」

 ぽけっとしていたのだろうか、ザキさんはさっきまでの優しい笑顔を隠していつものニヤリとした笑顔を出しながら、タオルを首にかけたまま俺の横に腰掛けた。上半身裸でうろうろしないでってあれだけ言ったのに。

「なっ…に言って…ざっざきさん…砂糖ひとつでいーですよね」

 視界におさめないように慌てて目の前のコーヒーの蓋を取って角砂糖を入れかき混ぜる。

「いや…ふたつ…」

 耳元で囁かれて次いで肩を抱かれながら角砂糖をもうひとつ入れるザキさんの手元を見つめる。肩を組まれたままコーヒーをゆっくり掻き回す様はもう意地悪の何者でもなくて、思いきって横を見た。

「やっと此方見た、」

 少年の様に笑われて一瞬思考が止まった隙に掠め取られる様にザキさんの薄い唇が触れ、すぐに身体と一緒に離れていった。暫く呆けていてザキさんがコーヒーを飲んで甘いと文句を垂れてからやっと、キスされたんだと気が付いた。

「わわわわっ…ザキさっ、ん…」
「椿これ甘い、お前の貰うわ」

 自分がいれたのに分けの分からない文句をつけて何事も無かったように俺のコーヒーを飲みながら、テレビを点け見始めたザキさんを見て、ああいつものザキさんだと、安心と落胆の溜め息をついた。


キスをひとつと
砂糖をふたつ


>>title:ことばあそび
(100925)
初ザキバキ。
赤崎は付き合う前と後で相当デレ度が変わればいい。つか付き合ったら相当甘えたりすればいい。
今回は振り回される椿を書きたくてよく分からなくなって撃沈。こういう男前(?)男臭い赤崎も好きです。表せなかったが。赤崎は上半身裸で下ジーンズでウロウロしてるに一票。自分に自信あるもんな!!←


壱汰

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