ドン引きです。
(!)


「ねえ、妹に欲しいんだけど」

 何度めか分からないこの戯言にもいい加減腹が立つ。先輩だからといってもう容赦はしない。顔面ぶん殴っても良いだろうか。

「だから、やらねーって言ってんだろ」
「ちょっと、一個年下でしょ君。えーと、あかざき君」
「あかさきッス。先輩」

 三年の持田はどっちでもいいよそんなことと、盛大にため息をつく。そしてもう一度今度は楽しそうにニタリと笑い、椿君頂戴よと宣った。

「だから、やらねーって」
「なんで君のなんだろーね…意味分からないんだけど」
「まあ俺兄貴なんでアイツの」

 それが本当に気に食わないんだよねと携帯をいじり始めた。いい加減、毎日毎日教室に来て椿をくれくれと騒がないで欲しい。椿のところに行かないのはきっと、アイツが自慢の足でこの変態から逃げ回っているからだろう。
 持田は何かをひらめいたかのように、パチンと指を鳴らしてタッチパネルを二、三操作すると耳に当てた。また椿に相手にしてもらえなかったから女にでも電話をかけているのだろう。つくづく最低な奴だ。そんな奴に、妹をくれてなんかなるものか。なんてことを考えてアホらしくなって帰って寝るかとカバンに教科書を入れる。

「あっ、椿くん?」

 持田の電話の相手が椿だと分かると、赤崎はなんで律儀に出てんだよこの馬鹿お前逃げてんだろうと声が漏れる。そんなのお構い無しに持田は電話の向こうの椿に喋りかける。

「椿くん、椿くん…いま君のおにーさんとこにいるんだけどさあ、おにーさん取られたくなかったら早くおいで」

 ぞわりと鳥肌が立った。先輩はというと至極満足そうに笑ってから通話を切る。こちらにニタリと笑んだ。ほんとやめて欲しい。

「さあて、演技でもしますか、椿くん手に入れるためなら君に手を出すことぐらい容易いよ?お兄さん」

 恐ろしいことに先輩は見境無しだ。いやでも、俺に手を出すことは絶対に無い。あり得ない。むしろこちらから願い下げだ。ふざけんな状態。しばらく睨み合いをしていたけどパタパタという足音が聞こえてきて、飛び込んでくるだろうドアを二人とも見つめた。案の定、バシーンとスライド式のドアを開け放って可愛い妹が姿を表した。

「だっだめ!駄目っす!遼ちゃんに触っちゃ嫌っす!」
「つばき…」

 俺はというと椿の言い回しに、テンションがだだ上がりで顔のにやけを抑えるのに必死で椿の顔では無くて足元を見つめた。
 すると目に飛び込んでくるのは、スカートから伸びる生足。(決していやらしい目では無い)いや、ちょっと待て、スカート膝上じゃねーか。

「あっ、あれ…」
「なにそれー面白くなーい。ねぇ、椿ちゃんはいつになったら俺と付き合ってくれんの?妹でもいーけど」

 椿は持田を見つけると、面白いくらいに飛び上がり、ささっと俺の後ろへと隠れた。可愛いったらない。

「おっ、俺…お付き合いしまっ…せんって…こないだも…ゆっ、ゆいました…し…遼ちゃんの妹なん…で、無理ですっ」
「それはこないだまででしょ。つーか俺にこんだけ言わせるの君だけなんだけど。分かった。セックスしよ」
「何が分かったんだよ意味分かんねー!」

 あまりのアホさに思わず叫んでしまった。俺の声に驚いたのか持田の訳の分からない理屈に恐怖を感じたのかは分からないが椿はぎゅうぎゅうと俺の腰に腕を回した。(おさまれ俺の心臓…)

「はー、面白くないなあほんと。んー、とりあえず今日はもう帰るわ。」

 シロさんからご飯のお誘いきたんだよね。今度は椿くんも一緒にカモろうね。そう残してから教室から出て行った。シロさんとやらご愁傷様と心の中で一瞬思ってしまってすぐに腰に抱きついている椿を振り返る。俺と目が合っておかしいくらいに視線を泳がせて、しばらくしておずおずと俺を見上げてきた。
 どこで覚えたのか。とりあえず俺は、妹だ目の前にいるのは妹だと頭の中で唱えてその可愛い妹の頭をくしゃりと撫ぜてやった。

「そうだ…椿。お前…スカート丈短すぎ長いのはけよ明日からは」
「遼ちゃん…」
「ん」
「おじさんくさい…」
「はっ?!」

 そう言って腰から離れた椿は眩しいくらいの笑顔を向けて短いスカートをはためかせてクルリと回って見せ、いつまでも子どもじゃないよ遼ちゃん。と告げて、カバン持ってくるねと教室を出て行った。
 俺はというと暫く椿が出て行ったドアを見つめていて気が抜けたようにヘナヘナとその場に蹲って頭を抱えた。
 頭の中では妹だと思っているのに心が追いつかない。なんて、どこの童貞だっつー発言。とにかくヤバイのだ。心臓が、痛い。


(121029)
義理兄妹なザキバキ。
まがさした←
高校三年の赤崎と高校一年の椿とか。
椿って名前が大介だから、女の子にできないんですよね。大介ちゃんはもはや雄を感じて。
だから椿ちゃんで固定になりますよね女体も。持田さんは椿くん呼びがしっくり。

11月1日 矛盾発見修正

壱汰









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