好きになった方が負け。なんてよく言うけれど、本当にそうだと思う。
「俺、彼女出来たんだよね〜」
椿は世良の言葉に今知りましたというように驚いた顔をして、その後におめでとうございます。と付け加えた。世良は椿の言葉にはにかみながら、お前はいい奴だなあと頭をくしゃくしゃと撫でた。
はにかんだ顔が陽だまりの様で、ザキさんはこういう世良さんの顔や明るい性格に惹かれたんだろうなと思った。
「赤崎の奴なんて俺の話そっちのけで酒飲みやがって、挙げ句ベロンベロンに酔っちまったんだぜこないだー」
馬鹿だよなーあいつ。と、世良は携帯を取り出しながら笑った。椿は携帯を操作する世良の指先を見ながらポツリと呟いていた。
「ザキさん…さみしいんじゃないんすかね」
「は?」
携帯を操作する手が止まって世良が椿にポカンとした顔を向ける。椿は、しまったと思ったが、時すでに遅し。曖昧な顔で笑って話を続けなければならなくなった。
「や…なんていうか、ずーと、世良さんと出掛けてたりしてたのが無くなるかもしれないじゃないですか…だから、かなって」
「……ぶははっ!なにそれ傑作!ねーってねーって、そんなのー!あいつぜってー俺に先越されたのが悔しくて腹立ててんだぜー!」
大声で笑っていたので周りにいた他のメンバーも何事かと寄ってきた。そこで世良に彼女が出来たという事を知ったメンバーに世良が奇襲を受け始めてしまった。椿は押し出される様にその騒動から抜け出て、すみません世良さんと言って自分の部屋に逃げ込む事にした。
部屋に入ろうとノブに手を掛けて、ふと、違和感に感じていたことに思考が辿り着いて椿はそのままの体勢で立ち止まった。
どうして世良は、彼女が出来た事を赤崎にだけ言ったのだろうか。世良の性格からして、彼女が出来たら誰彼かまわず自慢しに行っていた。今までは。なら、なぜ今回だけ?
「なに、ンなとこで突っ立ってんの?」
ビクリと肩が震えた。後ろを振り向く間もなく手のうえからノブを回されて、部屋に雪崩れ込む。グイグイと押されて足が縺れそうになるのを必死に堪えながら進む。
ベッドの支えに蹴躓いて顔面からシーツへとダイブする。そのまま両手首を掴まれて自分の背中に押し付けられる。ミシミシと軋んで痛い。
「あの…ザキさん…いたい…」
「黙れって言っただろ…。ヤル気無くなる」
全身の血がサァッと引いた気がした。こんな真昼間から。あと少ししたら練習も始まるのに。そう思いつつも、大人しく、されるがままになる事しか出来なくて、シーツに顔を押し付けて与えられる刺激に耐える。
赤崎は乱暴な手つきでジャージと下着を下ろして、椿の孔に性器をあてがう。まさかと思う間もなく、性器をねじ込められて脂汗が一気に出る。普通だと入らないのだが、数時間前にも赤崎によって孔を拡げられていたので、血は出る事なく挿入することが出来たのだ。それでも痛いものは痛い。椿はシーツを噛み額をシーツに押し付け痛みをやり過ごそうとする。
お構い無しに注挿を繰り返すのが、内臓を抉られさらに内臓を引っ張り出されそうで吐きそうになる。と、椿はガクガクと揺さぶられながら思った。脳も揺さぶられて意識が朦朧としていたと思ったら、背中に押し付けられていた腕を引かれて、体位を変えられた。ベッドに腰を降ろし、壁に凭れた赤崎の上にそのまま体勢を崩したまま沈み込む。噛んでいたシーツが口から離れて声が漏れる。
「ひっアアッ…んんっ」
自分の重さで根元まで性器を咥え込み、呆気なくイッてしまった。先端から勢いよく精液が出るのを見て恥ずかしくて情けなくて嗚咽が漏れた。
「なに、泣いてんだよ…」
「ひぅっ…だっ…だって…ザキさん…のこと…すき…だけど…」
苦しい。椿がそう呟くと赤崎の手が椿の性器を掴み扱き始めた。おまけに下からゆっくりだが腰を動かし始めて椿は泣きながら口元を押さえようと手を伸ばした。が、それは赤崎によって阻止されて、自分の性器へと導かれる。両手でぷっくりと膨れた自分の性器を掴む。恥ずかしくてすぐにのけようとしたが赤崎の手が上から絡まってきてそうもいかなくなった。
「ふっ…んんっ」
いつのまにか後ろの痛みも薄れて気持ちよさだけが椿を支配し始めた。唇を噛んで声が漏れるのを抑えるが、赤崎の椿の精液で濡れた手が口腔に入れられ舌を指先で愛撫される。おまけに扱いている方の爪先をダラダラと体液を零している尿道へと突き刺した。
「っ〜!!」
あまりの刺激に声も出ず、一瞬意識が飛んでしまったらしい。ぐったりと赤崎に凭れていて、赤崎はというと性器を体内から抜いているところだった。抜かれる瞬間にゴポリと精液が孔から溢れてブルリと身体が震えた。
身体が怠くてそのままベッドに沈み込む。いつもなら、仕度を終え、赤崎はすぐに部屋を出て行くのだが、なかなか出て行く気配がない。それでも、顔をあげるのが億劫で呼吸を整えていると、何かに足をグイッと掴まれた。そのまま身体を反転され性器を温かいタオルで拭われる。下半身に目を向けると赤崎の指が今度は孔に伸びていて椿は悲鳴をあげた。
「あっあの!ざっザキさん??!」
「うるせーな黙ってやられとけ」
そう言って指をいれて中を掻き出してくる。椿はあまりの恥ずかしさに枕をぎゅうぎゅう抱きしめてやり過ごそうとする。
「おい、なにおっ勃ててんだよ」
「だっだだだ…だって…ひぐっ…生理現象ッス…」
しっかりと立ち上がった椿のものを見て呆れた様に赤崎が呟く。
「生理現象…ねぇ…」
「もっ…ほっといて…くださいっ…ほっといたら…おさま…やっやっなに」
中を掻き出していた指を更に増やして動かす。面白いぐらいにビクビクする椿を見て赤崎は笑った。
「ほら、早くイけって」
「やっやっ…イケないッス…後ろだけでイケな…」
立ち上がったものを扱こうと手を伸ばしたが赤崎に阻止される。中に吐き出された精液が泡立ち粘着質な音が椿の耳を犯す。ぎゅうぎゅうと閉じていた瞳を開けるとボヤけた視界に赤崎が浮かぶ。
「ザキさ…ん……ふあ…んっ……?」
何が起きたか分からなくてまたぎゅうぎゅうと目を閉じると、口腔にヌルリとしたものが入ってきて舌を吸う。それが赤崎の舌だと分かって、椿は呆気なく果てた。
「…ふえ…」
「は……キスでイくとか…本当に好きだなお前俺のこと……」
「…ほっ…ほっといてください…」
椿は身体を丸めて枕に顔を埋め動かなくなってしまった。赤崎はそんな椿に少しだけ笑って服を着はじめた。
「練習出るんだろ…」
「……」
「出ねーなら俺が言っといてやるよ…腰が立ちませんって」
「でっでます!でるっす!」
椿は上体を起こしてまたヘニャリとベッドへと崩れ落ちた。
「シャキッとしねーと蹴飛ばすからな、じゃーあとで。」
そう言って赤崎は椿の部屋を出た。椿は丸まったまま恨めしそうにドアを見つめて、唇に触れる。
「ずるい……」
キスなんてされたら、諦め様にも諦められなくなってしまう。嫌いになれなくなってしまう。
「ザキさんの馬鹿…」
一番馬鹿なのは自分じゃないかと、椿は枕をドアに投げ付けた。
(121009)