01
 好きな人のことは、よくわかる。無意識に視線や言動を辿る。自分のものとは一切絡むことはない。一方通行。その先には、別の人物がいる。それでも、構わない。
 だからせめて、あの人が幸せでいられるように。自分が欲深い人間になってしまわぬように、神様、どうか。



セツナレンサ



「つーばきー!!」

 少しだけ掠れた大きな声と共に世良と、世良に肩を担がれたままの赤崎が椿の部屋に雪崩れ込んできた。何事かと目を見開く椿を其の侭に、世良は赤崎を椿のベッドへと放り投げ、あいつ珍しく酔ったみたいで、椿のとこ行くって言うから頼むな。そんなことを早口で言って開けっぱなしのドアから帰って行った。
 暫く何が起きたのか分からなくて呆然と閉められた自分の部屋のドアを見つめていた。が、俯せになっていた赤崎が片腕で顔を隠しながら仰向けになったので、赤崎に漸く視線を移した。はっきり言って酒に飲まれているのは一目瞭然で、彼がお酒に飲まれることなんて精神的に弱ってる時だけ。いつも自信に満ちあふれている彼は、なりをひそめている。

「電気…」

 いつも通り。椿はその先の言葉を聞かずとも電気を消し、赤崎が寝ているベッドを揺らす。一人用の簡易ベットがギシリと軋む。椿は声を出さないように息を詰める。暗闇の中赤崎に見つめられたような気がして、動きを止めた瞬間に腕を掴まれベッドへと押し倒される。切羽詰まったような息遣いと酒の匂いに椿は身体中が熱くなるのを感じた。股に押し付けられる物に一瞬ビクリと驚いたが、すぐに赤崎の昂ぶった性器だと知り、優しくズボンの上からさする。すると赤崎がグイグイと押し付けてくるので、椿は両手でジッパーを降ろしスラックスの隙間から手を挿し入れ性器を取り出す。

「っ…はっ」

 赤崎の熱っぽい吐息に興奮し始めた自分に恥ながらも、椿は手を動かす。このあと赤崎が椿の手であったり口の中であったりに射精して、この無意味な行為は終わるはずだった。
 いつもは一切椿に触れようとしない赤崎の手が椿のTシャツの裾を捲って腹部を舌で舐める。椿はびくびくと身体を震わせ、身体を硬直させた。それをお構いなしに今度は椿のジャージのズボンを下げはじめた。

「ちょ、な…ザキさ…」
「世良さん……」
「っ〜……」

 胸の突起に熱い息がかかりブルリと震えた。うわ言のように世良の名前を連呼する。何が起こったか呆然としているうちに下半身を剥かれ、性器を握られ、赤崎の物と擦り合わされる。

「っ…あっ…」

 椿も手を絡め、すぐに達してしまいそうなのを必死で耐える。顔の横で赤崎の息遣いがしてゾクリと震えた瞬間に耳を舐められ、椿は呆気なく達してしまった。赤崎も椿が出した精液を絡ませながら椿の腹に吐き出した。
 息を整える間もなく赤崎の手が椿の臀部を揉んで孔に精子を塗り始めた。赤崎だということで恍惚とした表情を浮かべていた椿も焦ったように赤崎の腕を掴んで声をあげた。

「っ…ザキさん!!」
「…椿……お前さ…俺のこと好きだろ?」

 息が止まるかと思った。赤崎の性欲処理を手伝ってから数ヶ月経ったが、一切そういうことに触れなかった。それは赤崎にとっても椿にとっても触れてしまえば面倒なもので、何かが音を立てて崩れていくのが椿には聞こえたような気がした。椿は何も答えることが出来なかったが、赤崎はお構いなしに行為を続けた。

「なら、いーよな。」
「ちょっ…あっ……ひっ」

 グチリと嫌な音がして椿は声にならない声をあげた。孔に赤崎の親指がお構いなしに入ってくる。痛くて捻じ込まれた部分が焼けた様に熱い。椿は浅い息を何度も吐いて痛みに耐える。

「はは…飲み込んでら……お前さ、俺のこと考えながらココ使ってたの?」

 そんなことはないと答えようとした椿の口を片手で塞ぎ指を人差し指、中指と二本に増やして乱暴に中を抉る。使っていないといえば嘘になる。それを赤崎に言い当てられたことが恥ずかしくて情けなくて、椿は涙を瞳にためる。

「も、挿れるぞ」

 赤崎は椿の肩を乱暴に掴み反転させ、頭をベッドに押し付ける。腰を引き寄せ臀部を割り、赤崎は数回自分の性器を扱き、先端を椿の孔に押し付けた。逃げようとする椿の腰を掴んで先端を無理やり押し込んだ。

「やっ…いっああァ」

 いくら拡げたりしたことがあるといってもろくに慣らさずの生身の質量は半端ない。しかし、赤崎のものを咥え込んでいると思うだけで、椿は吐精してしまった。息をはきながら痙攣する椿をそのままに、赤崎は椿の性器を扱きながら腰を進めていく。

「いた…っ…うっ…いたい…動かさないでくださっ…ひっあっあっ」
「先っぽだけでイッたくせに……つか、声…出すなって…萎える」
「っ〜…」

 椿が大人しくなったのを見計らって、赤崎は抽挿を繰り返す。あまりにも乱暴にしたので切れたのだろう擦られるたびに痛みが駆け巡る。それでも椿は顔を枕で隠し声を抑える。

「なんで…あんな女なんかがいーんだよ……」

 消えいる様に言葉吐き捨てて好き勝手に後ろから突いてくる。ああ、世良さんに彼女が出来たんだなと、漸く赤崎の荒れ様の意味が分かった。抽挿の度に切なげに紡がれる世良の名前を耳にしたくなくて必死で枕に顔を押し付ける。それでも、背中に温かいものが伝い、性器を押し込めるのと同時に赤崎に抱きすくめられ肩口に顔を埋められると、蔑ろなんかに出来なくて汗で少しだけ濡れた赤崎の髪の毛を撫でる。大丈夫ですよ、なんて、陳腐な言葉を頭の中だけで唱えながら赤崎を受け止めることしか出来なくて、椿は自分の情けなさに撫で続けることと泣くことしか出来なかった。



(120930)




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