「奥村くんは、違いますのん?」
あの、人好きのする笑顔で、やんわりとした口調で志摩は首をゆうるりと傾げた。そんなゆるい雰囲気なのに、自分の腕はガチリと掴まれていて些か痛い気もする。痛い志摩。と、溢した言葉は初夏の風にかきけされてしまう。いや、志摩の笑顔の裏のオーラというのだろうか、そう言ったものにかきけされてしまった。怒っている。怒らせた。掴まれていない方の手に持ったラムネのビー玉がカランと鳴った。
「俺のこと好きなんと、ちゃいますの?」
微動だにしなかった筈なのにどうしてビー玉が鳴ったのかと考えたけれど、よく考えたら、今自分は志摩の腕の中にいる。それが答えだった。
(なんだ、抱き締められてる)
首筋を掠める柔らかい髪が擽ったい。ちう、と、耳に唇を寄せられ、ピンク色が視界の端で揺れる。綺麗だと手を伸ばそうとしたらラムネの瓶を持っていたことを忘れていて、落としてしまった。嗚呼と、割れずに中身だけ出て耳の端でシュワシュワと音を出し、熱せられたアスファルトにラムネが零れる様をジッと見つめた。ラムネの瓶が太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
「余裕ですなあ、奥村くん」
グイッと腰を引き寄せられて、顎を掬われる。目の前がピンク色に染まる。
「ほんに、酷いお人やわぁ」
「……どっちが…」
どうでっしゃろか。歌うように紡いだ志摩の唇が目前で真横に嬉しそうにニイッとなったのを見て、ゆっくりと瞼を閉じた。
掠めたのは
ラムネの宇宙
(嗚呼、ラムネ味なんやね)
(0519)
とりあえず、駆け引き駆け引きな廉燐を書きたくて
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壱汰
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