家の電話が鳴り、居間でやっていた宿題の手を止め受話器を取る。 「もしもし」 「名前?久しぶり」 「え、風介?」 「うん」 受話器から聞こえるのは数ヶ月前に韓国に行った私の思い人。 「え、え?国際電話って高いんじゃないの?」 「ぷっ」 「?」 「そこじゃないだろ」 「ちょっと笑わないでよ!」 「すまない。でもっ、」 「くくく、」と声を押し殺して笑ってる。なによー、国際電話は高いのは本当じゃんかー。 「名前は何も気にしなくて良いよ」 「でも、」 「私が名前の声が聞きたいと思って掛けたんだから」 「そ、そう」 久しぶりに聞く風介の声は、気のせいか少しだけ低く聞こえて変な感じ。 「…ねえ、」 「うん?」 「元気?」 「元気だよ。風介は?」 「名前が居なくて余り元気じゃない」 「風介がそんな事言うなんて珍しいね」 「私だってそれくらいは言う」 「くすくす…でも、そういうのは私じゃなくて彼女に言ってあげるべきだよ…?」 「彼女…?」 「そう彼女」 風介は「ああ、そうか」と自分で勝手に納得していて「まだ言っていなかったね」と訳の分からない事を言っていた。 「名前が好きだ」 「…………………わ、私もで、す…」 それからは気恥ずかしくて上手く会話が出来なかった。 20100829 |