午後14時50分。
今日は楽しかった夏休みに終わりを告げる日。そして明日からは憂鬱な学校が始まる。だって、仲が良い友達とは夏休み中に遊んでるし、サッカー部のみんなとは毎日練習で顔合わせてるし。特に会いたい人も居ない訳で。勉強が嫌いな私にとっちゃ学校は憂鬱の塊でしかない。「学校がまた夏休みになれば良いのにー」居間のソファーに座りながら扇風機に当たり、麦茶を飲む。テーブルに置いてあった携帯が振動し始めて着うたが鳴りだす。直ぐに電話だと分かりディスプレイを確認せずに携帯に出る。


「もーしもーし」
「もしもし俺だけど、」
「オレオレ詐欺ですか」
「なんでだよ」
「ではさようなら。私はそんな間抜けな詐欺には引っ掛かりませんので」
「おい!佐久間だって!」
「知ってるよ」
「おいいい!」
「あははっ引っ掛かったー!」
「んなもん引っ掛かってねーよ!」
「もー嘘吐かないの」
「吐いてねーって!」


本当に、佐久間はからかい甲斐がある奴だわ。麦茶をもう一度飲んで、コップをテーブルに置けば入っていた氷がカラン、と音を立ててズレた。


「で、用件は?」
「ああ、源田が明日俺も手伝えたら手伝うからおにぎり作ってくれだとさ」
「わかった、じゃあロシアンおにぎり作るね!」
「止めろ」
「佐久間のは全部グロテスクなやつ作ってあげるよ」


私が真顔でそう言えば、間髪を容れずに返答がくる。


「すみませんごめんなさいお願いだから止めて下さい」
「ちっ、」
「マジでやろうとしただろ」
「そうですか、何か?」
「名前って馬鹿丸出しだよな」
「よし、グロテスクなおかず買ってこようかな!虫とかでもいいね!」
「本当に申し訳ありませんでしたっ」
「あはは冗談だよっ」
「はあ…お前が言うと冗談に聞こえねーんだよ」
「それ私最強じゃん」
「そーそーお前は最強なんですよー(馬鹿的な意味で)」
「今、馬鹿にしたでしょ?」
「さあ?」


鼻で笑う声が電話越しに聞こえてきてちょっと腹立った。家の中は暑くて、やはり扇風機に当たってるだけじゃ暑さは凌げる筈も無く汗が至る所から出て来る。佐久間に「暑い」と言えば「そうだな」って返ってきた。


「ねえ佐久間」
「あ?」
「今何処に居るの?」
「んなもん家に決まってんたろ」
「じゃあ出掛けようよ」
「何処に?」
「クーラーが効いてて涼しい場所」
「しゃあねえな。付き合ってやるよ」
「それじゃ今行くから」
「おう、早く来いよ」


電話を切り、直ぐに支度をして外に出る。「暑いな馬鹿たれ」空を見上げ暑さの原因の太陽に悪態を吐いてから佐久間ん家に軽やかな足取りで向かう。
いつも練習でみんなが居る状態で佐久間と合うのはなんともないけど、2人きりで合うのは意外と楽しみで仕方ない。


20100818

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テーマ「人外ファンタジー」
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