(※長い)


午後23時15分。
そろそろ寝ようと思い先程まで聴いていた音楽を止めてベッドに潜り込む。一気に音が無くなり静寂に包まれる。
今日は小鳥遊ちゃんとゲームセンター行って、プリクラ撮ったりして楽しかったなー。小鳥遊ちゃんの可愛い一面が見れて嬉しかったな、ふふ。今日1日の事を思い出してると、だんだん瞼が重くなってきた。途中途中、意識が飛びそうになるのをなんとなく阻止したりして遊んでる内に瞼が落ちた。瞬間にアラームセットしておいて枕元に置いてあった携帯が鳴りだす。電話の音はメールよりも音が大きくて、放した意識が引き戻される。誰だよ、こんな真夜中に電話してくる礼儀が皆無な阿呆は。余りの眠たさに電話に応じる気はなくて無視をしてるのにいつまでも鳴ってる。本当に誰だよ。いい加減、電話の所為で眠れなくなってきたじゃない。のそのそと手探りで携帯を掴み、開いてディスプレイを見ればそこに表示されていたのは不動くんの名前。こいつ、なに考えてんのよ。そうは思いながらも無意識に口元が弛む。


「…もしもし」
「遅え…さっさと出ろよ間抜け」


出れば、もしもしの返答も無く明らかにこっちは悪くないのに罵られる。…はあ。そう言えば不動くんから電話が来るのは初めてかも知れない。電話番号もメアドも交換してたのにお互い連絡した事がなかった。そう思ったらちょっと緊張してきた。


「五月蠅いな。私は寝てたのよ」
「そうかよ」
「…で、どうしたの?」
「眠れねー。どうにかしろ」
「良かったね。じゃあ切るかr「切んじゃねえよ」…何でよ」
「………まだ、切りたくねー」


いつも聞いてる不動くんの声とは違い、電話で聞いてる不動くんの声は只でさえ低いのに更に低くて私の鼓膜を振動させる。その感覚が何故か心地好く感じてしまう。


「ふーん…今日は素直だね」
「気のせえじゃねえの」
「ふふ、じゃあ素直な不動くんに免じてまだ切らないであげる」
「何のことだか」


さて寝れないとなると何をしたら良いか…。うーん。
考えた挙げ句何も良い方法が思い浮かばず、仕方ないから小鳥遊ちゃんと遊んだ事を話そうか。よいしょ、と体の体勢を変えるべく起き上がり壁に背中を預けてから不動くんに話し掛ける。


「あんね、今日小鳥遊ちゃんと遊んだんだ」
「おう」
「ゲームセンターに行って、ご飯食べたり、プリクラ撮ったり、ほんと楽しかったんだよ」
「おう」
「しかもね、小鳥遊ちゃん男前なんだよ」
「あいつが?」
「うん!お昼ご飯奢ってくれたんだ」
「へえー、そりゃ良かったじゃねえか」
「あとね小鳥遊ちゃんUFOキャッチャーすっごく上手くて、人形とか色々取ってもらったの」
「ほおー」
「私、小鳥遊ちゃんが男の子だったら間違いなく惚れてたね」
「馬鹿か」


「なによー、」と返せば微かに笑ってる声が聞こえた。


「明日さ、その人形不動くんにあげるね」
「んなのいらねえよ」
「ダメ、あげるから絶対受け取ってよ」
「なんでだよ?」
「不動くんに似てるから」
「余計いらねー」
「五月蠅い、受け取れ」
「はあ…しゃーねえな。仕方ないから貰ってやるよ」


半ば呆れながらも承諾してくれる今日の不動くんは、やっぱり素直だと思う。


「よし!」
「不細工だったらいらねえからな」
「大丈夫そこは問題ないから」
「あっそ」
「あ、それでねプリクラ撮った時の小鳥遊ちゃん可愛いかったんだよ」
「それは幻覚だな」
「ほんとだってば!そうだ、後でプリクラ送ってあげるよ。ほんとに小鳥遊ちゃん可愛いから!惚れちゃうよ!」
「そりゃねーわ」
「えー何でー?」


「俺が惚れてんのは名字だから」


不動くんが喋った瞬間に外からバイク特有の五月蠅い音が聞こえて、その所為で不動くんの言葉が掻き消されてしまった。


「ん?なに?聞こえなかった」
「別に、何も言ってねー」
「そ?」
「くくく、じゃあもう切るぞ」


何故か不動くんは今まで聞いた事のない様な笑い方をしていた。私なにか面白い事言ったかな?


「明日な」
「うん、バイバイ」
「名字、プリクラ送れよ」
「はいはい」


「じゃあな」そう言われてたったの15分程度の電話を切った。なんとなく不動くんとちゃんと話したら楽しかったな。でも、もう少し話したかった。



にしても「まだ切りたくねー」だなんて不動くんも可愛い一面があるんじゃない。
今日は可愛い一面を2つも見付けれたなー。とか思いながら、とりあえずプリクラを不動くんに送って私は眠りについた。


20100816

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