「ずーるーいー!!」 「はいはい、ごめんなさいねー」 私は親友の名前といつもの様に、屋上へ行くための階段でお昼ご飯を食べていた。親友の名前から昨日の事を聞いて、昨日より更に羨ましくなり冒頭の言葉を吐く。どうやらこやつは南雲先生に頬を引っ張られたらしい。私だって南雲先生に頬引っ張ってもらいたいとけしてMではないけれどそんな感情が込み上げる。 「ずるいーずる過ぎるー」 「そんなに羨ましいなら南雲先生に直接、頬引っ張って下さいって言えば良いじゃない」 「そっか!その手があったか!」 そこまでは考えが至らなかったわ!ナイスよ、親友の名前!と親指を立ててグッジョブとやれば眉毛を下げて困った様な呆れた様な顔をされた。 「あんたはMか」 「いや、私は断じてMじゃない!」 「じゃあBAMだね」 「BAM?なにそれ?BGMみたいな名前だね」 「馬鹿阿呆間抜け」 「親友の名前ーー!!!」 こんちくしょー!懲らしめてやる!そう思ったんだけど、BAMの意味が可笑し過ぎて笑いが口から豪快に吹き出した。 ・ ・ ・ また眠気を誘う5時間目が来た。だが今日は、その5時間目は保体なので眠気などさらさらない!ふははは!どうだ眠気め!昨日は負けたが、今日は勝ったぞ!ざまあみろ! ・ ・ ・ 「…暑い」 確かに今日は眠気には勝った。だけど、今度は暑さに負けてしまいそうだ。何なんだ今日は。異常気象の所為なの?暑過ぎるよ…絶対40度近くあってもおかしくない。こんな暑さの中で真面目に授業を受けてる君達は私には到底理解出来ないよとクラスメートに尊敬の眼差しを送る。南雲先生も楽しそうに動き回ってるし。うん、今日もかっこ良いなあ。なんて思ってたら視界がゆらゆらして、気付いたらサッカーボールが額に当たって倒れていた。「先生!名字さんが倒れました!」「ああ?!」薄れている視界の中で、周りがざわざわして私の所に集まってくるのと、南雲先生が血相変えて私の所に来たのを確認した。 「大丈夫かな…名前ちゃん」 「大丈夫かー?」 「名字が倒れる事もあるんだな」 おいコラ、そこの男子。バッチリ聞こえてるぞ。サッカーボールが当たれば誰だって倒れるもんなんだっつーの。 「ここは良いからお前らは、自主練でもしてろー」 「えー」 「えーじゃねぇ。サボったら評価下げるからなー。覚悟しとけよ」 笑いながらそんな事を言う先生を間近に見れてる私はたとえ視界が薄れていても最高に幸せです。今度は幸せ過ぎて意識を手放してしまいそうだ。 「名字大丈夫か?」 「あ…まあ」 「ったく。ちゃんとボール見てろよな」 「だって暑くて、」 「なら少し日陰で休めば良かっただろ?」 「そんな事したら、私寝ちゃいますもん」 「あははっ!そりゃそうだな」 「笑わないでくださいよ」…あ、そうだ!今こそ先生に頬引っ張ってもらうチャンスじゃない!早速、意を決して先生にお願いする。 「…先生」 「ん?」 「頬を引っ張ってください」 「は?」 「昨日、親友の名前の頬引っ張った様に私の頬も引っ張ってください」 先生は最初は驚いてたけど、暫く考えてから怪しい笑みを浮かべて一言。「良いぞ」と答えた先生がめちゃくちゃかっこ良かったのは言うまでもない。幸せを噛み締めていたら頬をおもいっきり引っ張られる。 「いひゃっ!いひゃいれすっふぇんふぇー!」 「おーおーこれまた随分良く伸びる頬だなー。いや、餠か」 「ふょ、にゃぎゅもー」 「先生付けろ。せ・ん・せ・い・を」 先程よりも強く引っ張られ、かなり頬が痛い。これは予想を遥かに越える痛さで薄れていた視界がクリアになる。頬が千切れちゃいそう。もう少し手加減してよ南雲先生。 「いひゃいー!ひゅみまひぇんーにゃぎゅもふぇんふぇー!」 「ぶっ!あははっ!面白れー顔!」 「っちょ、先生がしたんでしょー!」 「やれって言ったのは名字だろ?」 そう言いながらまだ笑ってる南雲先生にちょっとイラっときたけと、何だか可愛く思えた。 「ちゃんと後で保健室行けよ?」 「はーい」 ・ ・ ・ 「名前ー大丈夫ー?」 「あ、親友の名前」 保健室で緑川先生に手当てしてもらってる所に親友の名前が保健室のドアから顔を出した。 「あんたの事だから暑さにやられてぼーっとしてたら、ボール飛んで来たのにも気付かず、おでこに当たってぶっ倒れたって所かな?」 「よく分かったねー親友の名字さん」 「ありがとうございます、緑川先生」 そんなに私の行動はバレやすいのか?いや、親友の名前が鋭いだけか。私もその鋭さが欲しいぜ、全く。 「よし!じゃあ親友の名前、途中まで一緒に戻ろ!」 「うん。それじゃ、失礼しましたー」 「ありがとうございました、緑川先生」 「いえいえ。今度は気を付けるんだよ?」 「はい」 保健室から出て、教室に向かって歩きだす。にしても先程の事を思い返すだけで、頬が緩みだす。痛かったけど嬉しかったなあ。親友の名前に「気持ち悪い顔してるよ」と言われたが気にしない。 にや気が止まりません、先生! 「あのねー名前」 「なにー?」 「佐久間先生が意外と優しかったさ」 「嘘だ!私、居眠りしてたらかなりの力で叩かれたよ?顔は良いのにねー」 「…あんた本当に馬鹿ね」 |