今日は、南雲先生におでこをくっ付けてもらってめちゃめちゃ嬉しかったのに私は運が悪いのか、日直なのである。おかげで休み時間に、南雲先生の所に行く時間が余り無かった。今はSHR中で、SHRが終わったら帰らなきゃならない。つまり今日はもう先生に会えない。…寂しいでござる。
いつもなら帰る前に先生の所に寄る時間はあるのだが、なんと今日は我が妹の誕生日で私はプレゼントを買いに行かなければならない。先に買っとけば良かったと今になって後悔の念が押し寄せる。


「はあ…きりーつ、れーい」
「名字、真面目に号令しろ」
「これでも大真面目です」
「嘘を吐くな」
「ちっ、…起立!礼!」
「宜しい」


ったく、涼野先生め。なんであんなに厳しいんだか。そんな先生は、南雲先生のアトミックフレア食らって少しはあのお堅い脳みそを柔らかくするべきだとしみじみ思う。



「名前じゃあねー」
「バイバーイ」


次々とクラスメイトが、部活に向かったり家路についたりしている中で私は教室で日誌を書いてる。が、先ほどから全く進まない。書くことなんてねーよ馬鹿たれー。もういっそのこと記入者の所だけ書いて他は白紙のまま提出しようか。…いやいや。それは断じて駄目だ。そんな事をしたら確実に、明日も日直にされてその上、涼野先生にいつもの倍小煩く説教されて南雲先生に会いに行く時間がそれこそ本当に無くなってしまう。そんなの嫌よ!自分で、身を危険に晒さす様な事はしないわよ、良いわね私。…にしても進まない。


「日誌のバーロー」
「お前が馬鹿なんだろう」
「涼野先生?!」
「早く書け、阿呆」
「い、いつからそこに?」
「SHRが終わってから一度も俺は教室から出ていない」
「さ、左様でございますか」


なんだよ。もう私しか教室に居ないと思ってたじゃんか。つか、早く職員室行けよ。こんな所、親友の名前に見られたら何言われるか…。いや殺されるかも知れない。冷や汗を垂らしながら、日誌の内容を考えてたらアナウンスが流れる。


『涼野先生、お電話が来ております。至急、職員室に来て下さい。繰り返します―』


よしゃあああ!ナイス!アナウンスナイス!マジで感謝!


「じゃあ、私は職員室に行くからさっさと日誌書いて渡しに来い」
「へいへーい」
「明日も日直にするぞ」
「さあ真面目に日誌書こうかな!」


私がそう言えば涼野先生は眉毛をピクリと動かしてから「フンッ」と鼻で笑って職員室に向かって行った。あ、また前髪ガシガシしてる。あのまま自分の髪の毛毟って禿げてしまえ!



あれから20分経過。未だに日誌は白紙に近い状態。さて、どうする…。よし、ここはライフカードだ!

カード1
逃げる

カード2
逃げる

カード3
南雲先生に会いに行く


よし、カード3!って馬鹿!ほんと馬鹿!さっき駄目だって念を押したのに何やってんのよ私!どんだけ意志弱いのかしら…。ちょっと吃驚したじゃないか。…とりあえず授業内容とか適当に書いて、今日の感想は疲れた。うん、もうこれで良いや。時間無いから許せ涼野先生!
日誌を適当に書き終えて、鞄に勉強道具を放り込む。バサッ。「あ゙あ゙!」ファイルが豪快に落ちてしまった。中身が散らばってるから拾わなきゃ、そう思い屈んで中身を拾おうとした時に頭上から声が降ってくる。


「大丈夫か?」
「…あら南雲先生」
「お前はオバサンか」
「違います!」


この展開、どこぞの少女漫画だ。でも、嬉しいのは当たり前で。さっきまで突っ張っていた頬が緩んできた。「ほれ」「あ、ありがとうございます」受け取った中身をファイルに戻し、鞄に入れる。先生に会えたのはとても嬉しいのに、早く帰らなきゃならないのがもどかしい。


「なんか用事でもあんのか?」
「え、」
「いや急いでんなと思って」
「ああ、これから妹の誕生日プレゼント買いに行くんです」
「へえ」


なんだ…用事あんのかなんて聞くから色々と期待しちゃったじゃない。先生の阿呆。「名字って意外と妹思いなんだな」そう頭を撫でながら誉められる。先生、それは不意打ち過ぎます。


「意外とって何ですか」
「そのまんま」
「かっ髪がぐちゃぐちゃになるから離してくださいっ」
「ならもっとぐちゃぐちゃにしてやら!」
「あー!」


まるで子供の様に私の髪の毛をわしゃわしゃにしてくる。あーもう。そんな事されたら帰りたくなくなるじゃんか。先生のバーロー。



もっと傍に居たいです、先生!


(頬と耳が火照ってたのは気付かれなかったよね?)

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テーマ「人外ファンタジー」
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