今日も、机に向かい黒板と同じ事をただひたすらノートに書き写す為だけの面倒な1日の約半分が終わった。教室から出て玄関に向かう為に階段を降りる。丁度その時、部活動で恐らく走り込みをしている野球部の人達が私の横を通り過ぎて行くのと同時に生暖かい風が私の鼻を掠めた。


それから部活動をしている友達とか先生とかに会って「バイバイ」「さようなら」を繰り返し告げる。曲がり角を曲がってようやく目的地の玄関に着く。教室から玄関まではそう遠くはないが、いつもなんだか長い道のりを歩いてきた気分になる。
下駄箱に上靴をしまい、外靴を出す。ふと「遅せーよ」と玄関のドアから声が聞こえる。声のする方へ視線を移せば、不満顔をした不動がドアに背中を預けて私を待っていた。


「あれ?今日、部活あるんじゃなかったの?」
「なくなった」
「あ、そうなんだ」


軽く返事をしたけども本心は今、尋常じゃないほどに喜んでいる。だって、本来ならば今日は一緒に帰れない筈だったんだ。それが一緒に帰れるとなると嬉しさはいつもの倍に膨らんだ。
靴を履き替えた私に不動は「おら、帰るぞ」そう行って左手を差し出してくる。その行為でさえもいつもの倍に嬉しく感じる。にやけるのを隠す事を忘れて不動の左手を掴めば「にやんなキモい」とか言いながらも世間一般的に言う恋人繋ぎをしてくれた。

この帰る時が、面倒な学校生活での一番の楽しみと言えようか。





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