今、私が見てる雑誌のページには運命の赤い糸という見出しの記事が載っている。サブタイトルにはあなたは誰と繋がっている?となんともウキウキした可愛いらしい字体で書いてある。誰と…ねえ。正直、私は占いとかそういう非科学的なものは余り信じる方ではないけれど、赤い糸は前から少しだけ気になっていた。それが何故かと問われると上手く説明出来ないけれど。

幼なじみの明王のベッドに腰掛けている私に背を向けて椅子に座っている明王に「あのさぁ…赤い糸って信じる?」と私が言えば「赤い糸ぉ?」と小馬鹿にする言い方でこちらに向き返りながら言う。


「そう赤い糸」
「なにお前信じてんの?」
「赤い糸は信じてるよ」
「へー。占いとか信じねーくせによく言うぜ」
「赤い糸は別なの」
「占いも赤い糸も変わんねーだろ」
「変わりますー」
「へー?」


馬鹿にした口調と顔をする明王に苛立ちを覚えるが、ここはまず深呼吸。深く酸素を吸って、ゆっくり吐き出す。「…で、明王は?信じるの?信じないの?」「んー…まあ俺も信じるぜ」と、髪の無い綺麗なツルツルとした後頭部を軽く掻きながら言う。


「あら珍しい」
「ババくせぇぞ。その言い方」
「五月蝿い。でもなんで?」
「面白そうだから」
「なにそれ」


私が意味が分からないという顔を明王に向ければ「フン」と鼻で笑われた。こいつ…また私を馬鹿にしてるな。態度から滲み出る私を馬鹿にしてるオーラにまた苛立ちを覚えながらも雑誌に視線を移す。
「なあ」「…あによ」不貞腐れた様に言い放ちながら顔を上げると、良いこと思い付いたと言って笑う黒い笑顔をしたどこぞのガキ大将みたいな顔をした明王が私の双眼に映る。


「お前が赤い糸で誰と繋がってるか気にならねえ?」
「あーまあ…気になるっちゃ気になるかも…」
「それは俺」
「は?」


「だからお前と繋がってんのは俺」惚けている私にそう言って、さっきまでのガキ大将みたいな顔から卑しい顔になって近付いてくる明王。「つまりよ」と、言いながら座っている私の目の前まで来て屈み、私と同じ目線に合わせる。


「名前が好きだ。だから俺と付き合えよ」


こんな命令口調な告白アリなの…とか頭の片隅で思ったけど、それがなんとも彼らしい告白で思わず笑いが零れてしまった。





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