「煙草って美味しいの?」
「あー…吸ってみるか?」
「良いの?」


「良いぜ、来いよ」と大股を開いて我が物顔で私のソファーに座ってる俺様からお許しが出たので、言われるがまま目の前まで行けば、腰に腕を回されぐいっと引き寄せられる。まあそんな行為は毎度の事で多少は慣れている。それよりも煙草に釘付けになっていて、どんな感じだろ?とわくわくしていた私の予想を裏切り、口に来たのは煙草ではなく十三の口だった。「ちょっ、」口を僅かに開いた所から十三は口移しで煙草の煙を私の口に吐き出した。


「ゴホッゴホッ!」
「ど?旨い?」
「ま、まじい…。良くそんなの吸ってられるね」
「ふっ、まあ名前はまだお子さまだから分かんねえんだよ」


そう言って、今度は唇に軽く触れるだけのキスをしてきた。「お子さまって言っても十三と同い年なんだけど?」と言っても「それでも俺から見りゃオメーはお子さまだ」と煙草の煙を吐きながら言われる。「意味わかんないし」まだ私の腰には腕が回されたままで、そのお陰で十三の顔はすぐ近くにある。
この至近距離で、十三は煙草を吸っているけども、吐き出す煙はちゃんと私の居る方向ではない反対の方向に充満していく。
そういや、こんな近くで吸ってるとこ見たの初めてだなぁ…。


「あ、」
「ん?」


十三には煙草を吸う時に眉間に皺を寄せる癖が合って、それを見付けたのは私だけど、どうやら私はまた新しい癖を見付けてしまったらしい。煙を吐いた瞬間に片目を釣り上げるのも、十三の癖の様だ。


「ふふっ」
「…なんだよ?」
「いや、なんか十三可愛いなって」
「んだそれ」


ふふっと私が笑っていたら、煙草の煙をわざと私の顔に吹き掛けてから「つーか、俺より名前の方が可愛いから」とさらっと言われる。また恥ずかし気もなくそう言うことを言う…。可愛いと言われ慣れてない私の顔は熱を帯び始め、仕舞には耳までもが熱を帯びる。


「ふっ…顔、真っ赤だぞ」
「…うるさい」


熱を持つ頬を両手で隠しても、赤面してるのはバレバレで。意地悪な十三は楽しそうに笑ってる。「つか、そろそろ離してよ」「やだね」ソファーに置いてあった灰皿に煙草を押し付けて火が消えたのを確認してから、煙草を持っていた方の腕も私の腰に巻き付かせてから一言。


「いつでも名前と引っ付くくらい近くに居てえんだよ」


煙草ネタ1
題:藍日





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