「また死ねなかった」


今までこの言葉を地獄に来てから何度言ってきただろうか。今更、数えるのも面倒だから数えはしないが恐らく何十回も言っただろう。私は、クシャナーダの所にわざと行って喰われては生き帰り冒頭の言葉を述べるというこの行動を何度も繰り返している。クシャナーダに喰われ時の噛まれるあの快感が堪らなくて止められないのだ。ああ思い出しただけでもぞくぞくする。と考えていたら、口を開けながら近付いて来るクシャナーダが見えた。
目の前まで来たクシャナーダにニイっと笑ってから両手を広げ「早く私を噛んで」と言った瞬間に喰われグシャグシャと音を立て私の身体はバラバラになっていく。ああやっぱり…この感覚が堪らない。



目が醒めるとバラバラになった私の身体は元通りになって生き帰っていた。
「また死ねなかった」そう呟いてからまたクシャナーダに喰われる為に足を立たせる。早く、早くあの快感を…!垂れてくるよだれを拭う事も忘れて口角を持ち上げたまま足を進める。「まだそんな無駄な事をやっているのか?」ふと、人を小馬鹿にした顔で鬱陶しいマントをなびかせた奴が私の前に立ち憚る。無駄…とは多分、何度も自ら喰われに行く事を言ってるんだろう。


「…別に無駄ではないわ」
「いいや無駄だね」
「てゆうかそこ退きなさいよ」
「どうせまたクシャナーダの所にでも行くんだろう?」
「だったら?」
「そんなに喰われる事になんの意味がある?」
「そんなの簡単よ。私がやってる事は退屈しのぎにしか過ぎないわ。この地獄は何一つ楽しい事なんてない。ただただ恐怖に耐えて心が折れるまで生きていくだけ…そんな毎日に私は飽きたのよ」
「だから何度も喰われるのか?」
「そうよ。きっとあんたには分からないだろうけど、クシャナーダに喰われるのあれってすっごく楽しいのよ?スリリングで尚且つ気持ち良い」


「最高なの」と朱蓮の鎖を引っ張りお互いの息が掛かり、鼻先がぶつかる程度の距離で笑って言う。そしたら朱蓮の顔は酷く眉間に皺が寄り、私の肩を押して距離を取る。そう、他の奴等には苦痛でしかないクシャナーダは私にとっては快楽を与えてくれる最高な奴でしかないのだ。


「究極のマゾって所か」
「フン…あんたには関係のない事よ。だからさっさと退いて」
「そんなに苦痛の快楽を味わいたいのか?」


「ならクシャナーダより素晴らしい苦痛の快楽を私が与えてやろう」そう言って何処から出したか分からない首輪を私に着けてから怪しく笑った朱蓮に、クシャナーダに感じるものとは違うぞくぞくが身体中を駆け巡る。


「泣いて喚いても止めてはやらんからな」





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