「寒ぃー!」


寒さで少し震えた手で、ぎゅーと後ろから私に抱きついてくる綱海。「名前あったけーなー」冬目前のこの季節は急激に冷え込み、東京でもとても寒く、沖縄生まれでもなければ沖縄育ちでもない私にとっても応える季節である。
だが、生粋の沖縄生まれの沖縄育ちの彼にとってはこの寒さが私よりも応えるらしく部屋に居ても長袖にパーカーにパーカーにジャンパーという完全防備で、もこもこな状態。前に「何もそんなに着込まなくても…」と言ったら「ムリムリ!脱いだら寒さで凍死するって!」と顔面蒼白な顔で言っていた。


「もうなんで東京ってこんなに寒ぃ訳!」
「沖縄があったか過ぎるんだよ」
「いーや東京が寒過ぎるんだ!」
「でも、北海道に比べたらまだあったかい方だよ?」
「まじ?」
「行った事ないから分かんないけど、きっと北海道はもっと寒いと思うよ」
「…俺、ぜってえ北海道行かね」


私の体温を求める為に綱海が体を密着させてくる度に心臓が早くなる。それを知らない綱海の体温は冷たく、私の体温を蝕んでいく。もし、私の体温が綱海の体温に全て蝕まれてしまっても私は構わない。寧ろ、嬉しい。


「俺、名前いなきゃ冬になったら死ぬー」
「じゃあ冬眠したら?」
「それじゃ寂しいだろ、馬鹿」
「なら、」

「一緒に土の下で眠ろうよ」


私の背中に居る綱海には見えないだろうけど、私は笑ってそう告げた。貴方と私。永遠に土の下で眠れるなら


「おう。ずっと一緒にな」


この命さえ惜しくは無い。


20101125


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