(※幼なじみ設定、長い)


只今の時刻真夜中の2時32分。壁に掛かっている時計を見上げれば秒針がそう指していた。ソファーに腰掛けながら見るテレビは真夜中だから特に面白い番組も無く、ただBGMと化している。
遅い…。道也が珍しく「冬花が喜ぶから泊まりに来い」なんて言うから来てやったのに、あいつったら晩ご飯食べてから同じ学校の上司に呼ばれたからって私と冬花ちゃんを置いて居酒屋に行きやがった。しかも、「2時間くらいで帰って来る」って言った癖に未だに帰って来ない。
冬花ちゃんが起きてる間は一緒にトランプとかして遊んでたから楽しかったけど、3時間くらい前に冬花ちゃんは寝てしまったから今、私はとてつもなくつまらない。道也め…帰ってきたらあのこざかしい髭を一本一本ピンセットで抜いてやるからな。と心に誓った瞬間鍵の開く音がした。
やっと帰ってきた…。ちゃんとピンセットを持って玄関まで足を運ぶ。その足取りはなんだか軽く感じる。


「遅いぞ髭おやじ」
「ただいま」
「おかえり」


いつもなら、私が髭おやじって言ったら何かしら反撃してくる癖に今日は何も無い。「道也?」ふらふらした足取りでリビングに行こうとする道也の体を仕方なく、持っていたピンセットをズボンのポケットに入れてから支える。


「…ビール臭い」
「んー?」
「飲んできたの?」
「んー」


支えた瞬間にビールのあの独特とした匂いが私の鼻を攻撃した。臭いなあ…。私はビールは好きでは無い。と言うかお酒自体飲もうとは思わない。絶対、お酒なんかより炭酸ジュースの方が美味しいのにと今までに何度思ってきたことか。…まあ道也にそれを言ったら「お前がまだ子供だから飲めないだけだろ」とまあまあムカつく態度で言われた事がある。


ソファーに道也を座らせて、水を取りにキッチンに向かう。「暑い」一言そう道也が呟いて着ていた上着を脱いで何故か靴下まで脱ぎだした。め、珍しい…!道也が靴下脱いでるよ!あははっ!心の中で散々笑ってから道也に水を渡しに行く。


「はい、水」
「ああ…」
「どんだけ飲んだの?」
「さあ…」


これはいっぱい飲んだな。泥酔とまではいかないけどそれに近い気がしてきた。顔が赤くなって目がとろんとした道也を私はダイニングテーブルの椅子に座って眺めていた。「名前」「なに?」「こっちに来い」手招きして私を呼ぶ道也の前まで言われた通りに行く。


ぼーっとこちらを見ている道也になんだか気恥ずかしくて声掛けようとした所で口を塞がれた。
効果音を付けるならぶちゅうと言った感じにキスをされる。離れようとしても私の後頭部はちゃかり押さえつけられてて離れられない。そのうちに舌が入り込んできて呼吸がしずらくなり、快感も重なって頭が朦朧としてきた。


もうダメだと思った所でやっと口を解放され、呼吸を整える。


「名前好きだ」
「はっ?」
「大好き…愛してる」
「み、道也?」


「愛してるよ」


ずっと幼なじみをやってきて、何十年も同じ顔を見続けてきて見飽きた顔なのに、この時の道也の笑った顔がすごくかっこいいと思った。


「私も」と言おうとしたら、この髭おやじは既にぐっすり眠っていた。しかも翌日、昨夜の会話を覚えてるか聞いたら「何も。…何か言っていたか?」と何食わぬ顔で言ってきた。


「この、酔っぱらい髭おやじ!」


20101125


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