「根暗な奴…」


それが幼い頃の私から見たラクサスの第一印象だった。その時はまだ幼かったとは言えど、常に仏頂面のラクサスを見て何故そんな風に思ったのかは分からない。ただ何故か、根暗という印象が強かった。


「よっ!根暗!」
「誰がだ」
「え、あんた」
「そんな、当たり前だみたいな顔すんな。殺すぞ」
「嫌だー!」


これが私とラクサスの初めての会話。初対面のラクサスに「殺すぞ」と言われたのに怯みもしなかったのは、やはりラクサスが根暗な奴だと思ったからなのだろうか。


「やあ、根暗くん」
「てめえ…その言い方止めろっつったろ!」
「忘れた」
「死にやがれ!」
「いーやー」
「こんっの鶏野郎が!」
「んだよ根暗くん」


これが、私とラクサスとの間が少しだけ縮まった頃の会話。「鶏野郎」と言われたのは今思い出しても腹が立つ。


「ねーくーらーくさす」
「変な名前付けんな、鶏」
「鶏じゃないわよ!」
「じゃあなんだ?」
「ひよこ!」
「ぶっ。あんま変わってねーじゃねえか」
「変わっていますー!」


これが、初めてラクサスの笑った顔を見た瞬間。こいつも笑うんだなあ…根暗なくせに。と思ったのを覚えてる。
今、思えばこの瞬間から……いや初めて会った時から私はラクサスの事が好きだったのかも知れない。


「根暗…」


ラクサスがSQクエストに行ってる間は今、この名前を呟いても返事は返ってこない。そのお陰で退屈過ぎて死にそうだ。


「…早く帰って来い!馬鹿ねくらくさす!」
「んだよ、鶏」


カウンターで1人ジュースを飲みながら怒って叫んだ筈が、返事が返ってきた。


「あら、お帰り」
「…ああ」
「ラクサスが居ない間、暇だったんだぞ!」
「そりゃ良かったな」
「良くない!根暗め!」


ラクサスが手を振り上げたから殴られると思ったのに、その手は私の頭を優しく撫でた。


「?」
「鶏名前」


その時、初めてラクサスが私の名前を呼んでくれた。


「…な、なによ…ラクサス」


20100921


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