(※兄妹設定)


「フラれちゃったよお!うわあああん!」


雨でびしょびしょに濡れて帰ってきたかと思えば、ソファーに座っていた俺の所まで走ってきて子供みたいに泣き出した名前。そして、冒頭の言葉を述べた。


「名前?」
「っきょ…今日、彼氏に、…ぐすっ…フラれたの!」
「なんで?」
「ブ、ラコン過ぎるんだよっ…お前……き、気持ち悪いって…!」


今までに名前が泣く事があってもそれは大したことなかった。けど今、俺の目の前で泣いている名前は顔がぐちゃぐちゃになって大量の涙を流している。
それだけ、その彼氏を好きだったって事か…。


「わ、私はっ…ただお兄ちゃんの事もっ…彼の事も好きなだけなのに!」


そう言って座り込む名前を見ながら、俺は不謹慎にも嬉しいという気持ちが込み上げてきた。
俺は、毎日毎日嬉しそうに幸せをだだ盛らしながら彼氏の話を俺にしてくる名前が嫌でしょうがなかった。
ちゃんとした血の繋がりがある兄妹なのに俺は幼稚園の時から名前が好きだった。それなのに、気付けば彼氏が出来ていてあんな顔して惚気話をされ続けた。名前は俺の気持ちも知らずにずっと…。


だから俺は、フラれたと言って泣き崩れる名前を見ながら気付かれないように微かに笑った。


「ずっと……大好きな、のに…」
「……!」


ああ…、どうしてだろう。
名前がフラれて嬉しくて、その震える肩を抱き締めて俺の物にしたいのに……身体が動こうとしない。
きっと、名前が俺じゃなくて彼氏だった男をずっと大好きだと言ったから。


―俺はいつになったら名前に愛して貰えるのだろう?―


名前に、「タオル取ってくる」と告げて取りに行くフリをして洗面所で俺は声を殺して泣いた。


20101004


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