「…俺、さ」
「うん」


さっきから言わなくちゃと思ってるんだけど中々切り出せない俺が居る。内容はもちろんアメリカに戻ると言う話。
彼女である名前を置いて行くのは、彼氏の俺はとても心苦しい訳で…。連れて行きたいんだけど、ねえ。俺、まだ中学生だし。くそ、自分の年齢を恨むよ。


「あ、のさ」
「うん」
「その、」
「うん」


名前は優しいから切り出せないでいる俺の話を怒らずに聞いていてくれる。
むしろ、この場合怒られた方がまだすんなり話せるんだけどなぁ。
優し過ぎるのも酷だ。とニコニコしてる名前の顔を見ながら思った。シャキッとしろよ、俺!自分の頬を強く両手で叩けば名前は少し驚いていた。


「名前…大事な話があるんだ」
「うん?」
「……俺、あ、アメリカに戻る事になったんだ」


そう言うと、先ほどまでの相づちは無くなり泣いたかと思い顔を覗けば「ここに居て!」と言い走ってどこかに行ってしまった。


「…?」



それから10分くらい経って名前はまた走って戻ってきた。「大丈夫?」と尋ねれば「大丈夫」と乱れた呼吸を直しながら答えた。


「土門くん!」
「は、はい!」
「これ!」


ぐいっと俺の前に差し出された名前の手には5輪のラベンダーが俺の髪と同じリボンを付けてラッピングしてあるのが握られていた。


「え?」
「あげる」
「?ありがとう」


ラベンダーを受け取る。けど、俺は正直言ってラベンダーは好きじゃない。匂いがどうしてもダメなんだ。まあ我慢すれば問題はないんだけどね。


「土門くん、ラベンダーの花言葉知ってる?」
「えーっと…知らないや」
「ラベンダーの花言葉は貴方を待っていますなんだよ」
「へえー……え?つまり、」
「つまり、土門くんがアメリカに行っても私ずっと待ってるよって事!」
「ずっと?」
「ずっと!」


「だから私が居ないからって浮気しちゃダメだよ!私は待ってるんだからね!」と言う名前が無理して笑ってる様に見えた。あ…無理させちゃった。
お詫びの気持ちで抱きしめて、離れている間は寂しいから今から名前と沢山触れ合っておく。
名前のお陰でラベンダーが好きになれそうだ。


題:瞑目
20100918


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