久遠監督が、かっこいいのは見て取れてたから分かってた。でも、だからと言ってもそこまではモテないだろうと思ってた。
けど、違った。久遠監督はめちゃくちゃモテる。私はまだ子供だから監督の寡黙な所が良いって言うあの女の人達がよく分からない。寡黙な人より元気で良く笑う人の方が断然良いに決まってる。
そう例えば円堂くんみたいな。


「あのメアド教えてください!」
「…」
「で、で電話番号でも良いので!」


なのに何故だろう…。監督が女の人達と居る所を見てるのが辛い。じゃあ見なきゃ良い、と言う話なんだけど…見ずにはいられないんだ。
おかしいな…私、矛盾してる。


「良ければこれからお茶しません?」


3〜4人居る女の人達の中でも1人だけとても美人な人が居た。その人が監督を誘っている。止めて。恋愛感情の嫉妬が私の中で渦巻き始める。
今までは、私は子供で大人の久遠監督を好きになる筈がないと思っていたのに今はどうだろうか。女の人と居る監督に嫉妬して私だけを見て欲しいと独占欲に駆られている。私は否定しながらも監督を好きになっていた。
この後練習はないから、きっと監督は女の人達の誘いを受けるだろう。断る理由なんてないんだから。「ねえー」と監督を落とす為に女特有の甘ったるい声を漏らしてる。気持ち悪い。監督に色目使わないで。監督に触らないで。…触らないでよ。


「…やだ」


恋は盲目というのは全くその通りで、いつもの私ならこんな事しないのに…。と頭の片隅で思いながら、監督の腕を掴んだまま聞こえてるか分からない小さな声で「行かないで」と呟く。


「…すまない。先客が居るから私はこれで」
「え、ちょっと!待ちなさいよ!」


女の人達の野次など気にせず、監督の腕を掴んでいた私の手を優しく握って歩きだす。引っ張られるまま私はついて行く。
そのまま近くにあった建物の陰に連れて行かれて私の目を真っ直ぐに見て「あんな事をされては流石の私も手を出さずにはいられなくなる」と口説き文句を言われた後に優しく抱きしめられた。


恋の前では内気な私が内気ではなくなってしまう。


20100918


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