「よっしゃお前達!花火するぞ!」 「おおー!」 「僕パス」 暗がりの納屋にいとこ達を連れて花火をすると宣告する。だけど猫背の佳主馬はパソコンに向かったまま気の抜けた声が返ってくる。 「はいノリ悪い奴強制参加ー」 「さんかー!」 「…なにその理不尽なルール」 「理不尽もなにもない!親族が集まる=花火だよ!」 「そんな方式聞いたことない」 「私がルールだ!」 「意味分かんない」 「もう良いから花火するよ!ほら!」 佳主馬の腕を引っ張り、行こうよと態度でも示すが頑として動こうとしない。 「いい加減にしてよ。僕はそんな子供みたいな事s「子供がなに言ってんの」子供じゃないって」 「うるさい。では強制連行せよ!」 「せよー!」 「離せって!」とは言いながらも大した抵抗もせずに祐平と真悟に連行されて行く。 ・ ・ ・ 「名前姉ちゃん早く花火!」 「はいはい」 早くと私を急かす真緒。それを合図にみんなが急かしてくる。袋詰めの花火をバラして、順番に渡していく。佳主馬に渡せばいらない、とそっぽを向かれてしまった。仕方なく、子供達と一緒に花火をする。 ・ ・ ・ 「ではこれより打ち上げ花火と線香花火を開始する!」 「いえっさー!」 次々と準備していざ着火。ドンッドンッと花火大会とまでの大きさではないけど小さな花火が夜空に咲く。 「うわあーきれー」 「名前姉ちゃんスゲー!」 「私が凄いんじゃないわよ」 ちっぽけな花火だけど綺麗には変わりなくて、縁側に座りながら見てた佳主馬も流石にこれには感動したのかちょっとだけ頬が弛んでた。佳主馬の隣に行き、線香花火を渡せば先程までの文句は無く黙って受け取る。線香花火に火を点ければパチパチと音がなる。 「たまには花火も悪くないでしょ」 「たまには、ね。でも、たまにって言っても夏しか出来ないよ」 「冬だって頑張れば出来るわよ」 「たかが花火の為に頑張りたくない」 「えー」 「あ、落ちた」 「まだまだね。私なんてまだ続いてるわよ」 「五月蠅い」と指で肩を小突かれせっかく大きくなってた火種が落ちる。 「あ゛ー馬鹿たれ!落ちちゃったじゃない!」 「ふん。僕の邪魔したからだよ」 「佳主馬がパソコンばっかやってるのが悪い」 「悪くない」 「…はあ」 最近の中学生はみんなこうなんだろうか…。佳主馬の将来が思いやられる。悶々と眉間に皺を寄せて考えてたら肩に重みが掛かる。「重い」と悪態を吐いたのに「…名前ありがとう」と佳主馬は言っていた。何に対してのありがとうなのかは良く分からなかったけど、多分花火の事だろうと思って聞き返さないでおいた。 それからはただただ、縁側に座っていとこ達が花火してる所をずっと見ていた。パチパチと音が鳴って庭だけが綺麗な色を発光して見惚れてしまった。 題:確かに恋だった 20100825 |