「名前」 呼ばれた事による返事と一緒に、声がする方向へ振り向けば唇が塞がれ温かくなる。小さなリップ音を一つ残して離れていくそれ。直ぐにキスをされたと気付き唇だけじゃなく全身が熱くなる。佳主馬の顔を見れば目が合う。 「なにすんのよ」 「別に」 そしてまた塞がれる。今度は、先程のキスとは違って大人のキス。酸素が欲しくて口を開けたのに、入ってきたのは酸素じゃなく佳主馬の生温かい舌だった。歯列をなぞり私の舌を捕らえて絡ませる。何度も角度を返ては貪られ、そのたびに私の声とは思えない甘ったるい声が出て来て恥ずかしくなる。 「っは。…はあ…はあ、」 やっと佳主馬の唇が離れて酸素が充分に取り込める。酸素が足りなくて目の前が霞んで見えた時は駄目だと思った。 「ごめん。…大丈夫?」 「馬鹿」 肩で息をしながら言葉を発する。心配そうな顔して私を覗いてくる佳主馬を睨み付けてやれば頭にキスを落とされた。 「いきなり何よ?」 「…名前が好きで堪らなくてキスしたくなったんだ」 「なによそれ」 「そのまんまの意味」 題:確かに恋だった 20100822 |